家を建てようと考えた時、可能な限り長くその家に住みたくなるように設計する方がほとんどです。
しかし、将来家族が高齢になって介護が必要となる、または自分自身に介護が必要になってくる可能性もあるでしょう。
そこで現在、将来介護が必要になった時でも安心して暮らせるようにする「バリアフリー住宅」を検討されている方は多いです。
今回は、バリアフリー住宅の特徴と、建てる際に押さえておきたいポイントをご紹介します。
目次
バリアフリー住宅の定義とは?
バリアフリー住宅とは、単に介護が必要になった場合に役立つ家というわけではありません。
赤ちゃんから高齢者まで、幅広い年代人でも安心・安全・快適に暮らせる家がバリアフリー住宅となります。
バリアフリーという言葉以外にも「ユニバーサルデザイン」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。
ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、人種、障害の有無などは一切関係なく、どんな人でも利用しやすいよう考えられたデザインを指します。
実はバリアフリーと目指しているものはかなり近く、どちらも人々の安全性を高めることができます。
ただし、ユニバーサルデザインは住まいだけでなく公共施設や都市環境など対象範囲が広く、身近な住まいにはバリアフリーという言葉が使われることが多いです。
バリアフリー住宅で押さえるべき基本的なポイント
将来のことも見据えてバリアフリー住宅を建てようと考えた時、設計の段階で押さえるべき基本的なポイントがいくつかあります。
下記でご紹介するポイントを考慮しつつ、バリアフリー住宅を目指しましょう。
段差をなくす
まず基本的なポイントになってくるのは、段差をなくすという点です。
高齢者にとって段差は躓きやすく、転倒のリスクを高めてしまいます。
また、車いすでの生活となった場合に段差があると車輪が引っ掛かる恐れもあるでしょう。
介護する側の負担も考えると、バリアフリー住宅では段差のないフラットな空間にしていくことが大切です。
温度差のない家にする
同じ家でも部屋ごとに温度差が生じることは多いです。
例えばリビングは暖房が効いていて暖かい環境なのに、廊下に出ると凍えるほどの寒さを感じてしまう場合があります。
こういった温度差は身体へのストレスや結露によるカビ・ダニの発生にもつながってしまいます。
また、急激な温度差が生じると血圧が乱高下する影響で脳内出血や脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こす「ヒートショック」なども発生しやすくなります。
このような問題・リスクを回避するためにも、バリアフリー住宅では部屋ごとの温度差をなくしていきましょう。
転倒予防をする
段差をなくすことにもつながりますが、より安全な暮らしを目指すためにも転倒予防を施していくことが大切です。
例えば廊下や階段に手すりを設置すれば転倒リスクを軽減できます。
廊下や階段以外にも、玄関やトイレ、浴室などに設置することで立ち上がる時の支えにもなってくれます。
ワンフロアで生活が完結する間取りにする
高齢になると足腰の衰えで、2階への頻繁な行き来が厳しくなります。そのため、リビングや水回り、寝室は1階にまとめられる間取りが理想的です。特に寝室は盲点になりやすいので、新築の段階なら将来の生活の変化にも対応できる間取りを考えておくと、将来リフォームの手間を省けます。
高齢になってくると足腰が衰えてしまうことにより、頻繁に2階へ行き来するのが難しくなってしまいます。
そのため、バリアフリー住宅ではリビングや水回り、寝室を1階にまとめた間取りが理想的です。
寝室は特に盲点となりやすいため、新築の段階で将来ライフスタイルが変化した場合にも対応できる間取りにしておきましょう。
現段階からバリアフリーを意識した造りにするだけで、将来的にリフォームの手間も省くことができます。
各部屋・設備のバリアフリー化のポイント
バリアフリー住宅の基本的なポイントを押さえたところで、次は各部屋・設備でバリアフリーを取り入れる際のポイントを解説していきます。
玄関・廊下
玄関や廊下にバリアフリーを取り入れる場合、まずは段差をなくすことが重要です。
特に玄関は車いすの方や杖を利用している方が利用しやすいように、段差はない方が良いです。
また、スロープを設置すれば段差で躓き転倒するリスクも軽減できます。
廊下は車いすの方も通りやすいように十分な広さを確保したり、手すりを設置したりすると安心です。
リビングダイニング
家族団らんの場にもなっているリビングダイニングでは高齢の方も過ごす時間が多く、そのためか転倒事故が発生するリスクが高い場所の上位に挙がっています。
例えばリビングの床で滑ったり、リビングと部屋の境目にある段差に躓いたり、置かれているものに引っかかったりするなどの原因で転倒する恐れがあります。
このようなリスクを軽減するためにも、リビングダイニングは段差をなくし、できれば滑りにくさにも考慮しましょう。
キッチン
キッチンは立ちながら作業することがほとんどで、高齢になってくると調理するのも大変になってきます。
そのため、バリアフリー住宅にするならキッチンの高さを調節し、立ったままでも疲れにくい、または座ったままでも作業ができる設備に交換するのがおすすめです。
また、食器棚なども高い位置に作ると取り出す時に大変なので、あまり高い位置に作らないようにするか可動式にすると収納もしやすくなります。
浴室・洗面台
浴室の床は他の場所に比べて転倒しやすいため、壁や浴槽内にも手すりを設けておきましょう。
さらに転倒を防止するためにも、床やバスタブは滑りにくい素材を活用した方がおすすめです。
洗面所は車いすの方でも座ったまま利用できるように、通常よりも低めの設備を用意しておくと便利です。
また、洗面台を設置する場所は狭くなりやすいため、車いすでも旋回できるほどの広さ(1,500mmが目安)を確保しておきましょう。
トイレ
体の自由が利かなくなってくると、トイレへ行くのも億劫になってしまいます。
しかし、夜中に起きてトイレに行きたくなることも多いため、なるべく寝室とトイレの位置は近づけた方が良いです。
また、寝室とトイレを近づけることで寒い時期のヒートショックも防げます。
他にもトイレは要介護者も介護者も気を遣う場所になってくるため、介護をしなくても1人でできるように余裕のある広さで設計しておき、手すりを設置するようにしましょう。
場合によってはトイレ自体もリフォームで便座が昇降し、座りやすい機種を選ぶのもおすすめです。
扉・照明
各部屋の扉は一般的な扉タイプではなく、引き戸を採用した方がバリアフリー住宅にふさわしいです。
玄関も扉タイプより引き戸にした方が、車いすでも出入りしやすくなるのでおすすめです。
照明は一般的にスイッチを立った時に押しやすい位置で取り付けるケースがほとんどですが、バリアフリーを考慮するなら車いすでも押しやすい位置にボタンを取り付けましょう。
また、廊下や階段には人感センサーの照明やフットライトを取り付けることで、わざわざスイッチを押さなくても足元を明るくしてくれます。
まとめ
今回はバリアフリー住宅についてご紹介してきました。
バリアフリー住宅は体に不自由な面が出てきても、安心して長く暮らせる場所を目指して設計していきます。
今回バリアフリー化のポイントを解説してきましたが、これ以外にも様々な工夫を凝らせるため、どのようにバリアフリー化すればいいか迷っている方はぜひバリアフリー住宅の設計・施工を得意としている建築会社に相談してみましょう。