不動産業界では、現況という言葉が使われます。
この言葉は、一般的に使うことがないため、どのような意味か分からないという人も多いでしょう。
そこで今回は、現況がどのような意味を持つのか、現況渡しはどこまで可能なのか、現況渡しと現況優先とはどのような意味なのか、現況渡しでトラブルにならないためにはどうすべきなのかといった点について解説していきます。
目次
現況(現況渡し)とは?
まずは、現況(現況渡し)とはどのような意味なのか解説していきましょう。
土地売買で使われる「現況」の意味
土地売買で使われる「現況」は、インフラ整備や造成などしないまま売買することを意味します。
そのような土地は、現況有姿分譲地と呼ばれています。
建物売買で使われる「現況」の意味
建物売買で使われる「現況」は、修繕やリフォームなどの手を加えないまま売買することを意味します。
どちらのケースも不動産売買契約書の中に、現況有姿と書かれている場合は、引き渡すまでに変化が生じたとしても売る側はそのまま売買をするという意味になるのです。
しかし、必ずしも売る側の瑕疵担保責任が免れるというわけではありません。
現況渡しはどこまで可能?
不動産業界において、現況渡しはどこまで可能とされているのか気になる人もいるでしょう。
続いては、現況渡しをする際に知っておきたいポイントについて解説していきます。
知っていることは伝えなければならない
1つ目は、知っていることは伝えなければならないという点です。
これは、告知義務と呼ばれています。
売る側が不動産の引き渡しを行う時に、その物件や土地について知っていることは全部伝えなければいけないということを意味します。
事件や事故があったこと、何らかの不具合があることなどを知っているにも関わらず告知しないこともないとは言い切れません。
しかし、それによって買う側から契約違反という理由で損害賠償を請求されてしまうこともあるので必ず守らなければいけないのです。
これまでに行った修繕履歴、補修箇所についても告知しなければいけないとされています。
もしもどの程度告知すべきか迷ったら、不動産会社など専門的な知識を持つ機関に相談してみることをおすすめします。
契約不適合責任とは?
2つ目は、契約不適合責任についてです。
2020年に民法が改正され、これまで瑕疵担保責任と呼ばれていたものが契約不適合責任に置き換えられました。
契約不適合責任に置き換えられたことによって、物件が契約内容と適合しない場合に売る側に対して追完請求が可能になったのです。
追完請求というのは、必要な修繕などを行うことで契約内容と同じ状態にすることを意味します。
追完請求しても足りない場合は、代金の減額請求や損害賠償請求も可能とされています。
それだけではなく、状況によっては契約の解除もできるという規定が設けられました。
このことから、売る側は買う側が請求した内容に応じなければいけないということになるでしょう。
つまり、改正前と比べると買う側を保護するという考え方がさらに明確になったと言えます。
賃貸物件で使われる「現況渡し」「現況優先」とは?
賃貸物件においては、現況渡しと現況優先という言葉が使われています。
続いては、賃貸物件における現況渡しと現況優先についてみていきましょう。
図面と実際の間取りが違う場合は現況が優先される
賃貸物件の中には、図面と実際の間取りが異なる場合があります。
そのような場合は、図面と実際の間取りが違う場合は現況が優先されるのです。
なぜかというと、賃貸物件はその物件が作られた時の図面をずっと使いまわしているケースが多いからです。
今でこそ、パソコンを使って誰でも作りやすい状況になっていますが、かつては高いお金を払って専門的な知識を持つ人に作ってもらうということが多く見られました。
何度も図面を作ってもらうことが難しいという理由から、リフォームなどをしても使い回し、「現況優先」という但し書きがされています。
そのような物件は、きちんと内覧をしないと思っていた部屋と違うという事態に陥りかねないので注意が必要です。
生活に支障をきたす場合は大家が修繕を行う
もしも、生活に支障をきたす場合は大家が修繕を行うことになります。
入居者が故意的もしくは意図的に傷をつけたり、設備を故障させたりした場合はその限りではありませんが、基本的には大家が修繕をしなければいけません。
なぜ大家が負担しなければいけないのかというと、入居者は使用するための対価として大家に対して家賃を支払っているからです。
家賃を支払ってもらっている以上、生活に支障が出ないような物件を提供しなければいけないということになります。
現況渡しでトラブルにならないために
トラブルになる可能性が高い現況私ですが、いくつかのポイントを押さえておけば回避できる可能性があります。
最後に、現況渡しでトラブルにならないためのポイントについてみていきましょう。
必ず内覧しておこう
1つ目は、内覧を必ずするということです。
現況渡しや現況優先ということが分かっていたとしても、実際の状況は自分自身の目で確認しておく必要があります。
内覧をした際には、室内の様子を写真などに残しておくとそれが記録になるのでおすすめです。
もしどうしても内覧ができないのであれば、思っていたものと違ったとしてもノークレームにすべきだと言えます。
納得できる物件を選ぶためにも、内覧は必ずすべきだと感じる人が多いでしょう。
契約しないという選択肢も持っておこう
2つ目は、契約しないという選択肢も持つということです。
現況と違う部分があった場合、本当にその物件で良いのかもう1度よく考えてみましょう。
そして、他に良い物件がないか探した方の満足度が高まる可能性があることも念頭に置いておく必要があります。
それでも納得できるなら契約し、納得できないと思うなら契約をしないという選択肢も選べるようにしておくことをおすすめします。
まとめ
賃貸物件を契約する際に、現況渡しや現況優先といった言葉を目にすることがあります。
それがどのような意味を持つのか知っておかないと納得できる物件で契約できない可能性も出てきます。
そのため、賃貸物件を借りようと考えているなら、現況という言葉を知っておいた方が良いと言えるでしょう。
そうすることで、現況渡しでトラブルになってしまうことを回避できるようになります。
それだけではなく、納得できる物件を選べるようになるので、住み始めてからの不満を感じにくくなるというメリットもあります。
もちろん納得できれば現況渡しの物件でも良いですが、契約しないことも選択肢の1つにもっておくとより良い物件に出会いやすくなるでしょう。