賃貸物件の契約時に支払った敷金が返還されたら嬉しいものの、返ってこなくても仕方がないと諦めている方も多いのではないでしょうか。
しかし、敷金はよほど借主に傷や汚れの原因が無い限り、満額返金されるのが基本です。
そこで今回は、敷金の返金を求める敷金返還請求権について解説します。
敷金返還請求権の請求方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
敷金返還請求権とは?
敷金返還請求権とは、借主が買主に対し敷金の返還を請求できる権利です。
ここでは、敷金返還請求における借主の権利や時効について詳しく解説します。
敷金の返還を請求できる借主の権利
一般的に賃貸契約時に支払った敷金は、借主が貸主に対し完全に部屋を明け渡した後、部屋の原状回復が完了してから返還されるものです。
原状回復は貸主が行いますが、借主負担の費用は敷金から差し引かれます。
どのくらいの費用負担があるかは終わってみないとわからないため、精算ができるのは原状回復が全て終わってからです。
敷金は、いつまでに返却しなければならないという決まりがありません。
しかし、多くの場合退去してから30~45日程度で返還されます。
敷金返還請求権が発生するのは物件を明け渡した翌日からで、明け渡し前に請求はできません。
また、敷金の返還は物件の原状回復によって異なりますので、請求権があるからといって、必ずしも返還されるとは限りません。
時効は5年間
敷金返還請求権は、物件を明け渡してから5年以内であれば請求可能です。
何もしなければ5年で時効になりますが、時効を迎える前に敷金返還請求権を講じれば、そこから6か月間は例え5年を過ぎたとしても時効は成立しなくなります。
しかし、5年間の猶予があるといっても、請求するのが遅くなればなるほど、敷金を取り戻せる可能性は低くなります。
数年前の精算を今さら正確にするのは難しいということに加え、「今さらなぜ」と貸主が渋る傾向にあるからです。
敷金が満額返還されるケース・されないケース
敷金とは、賃料の未払いや通常の使用範囲を超えた傷や汚れの原状回復に充てられます。
そのため、借主の過失による傷や汚れがある場合、敷金の満額返還は難しくなりますし、返還自体されないケースもあります。
一方で通常の使用範囲内で起きた摩耗や経年劣化の修繕費用は貸主負担になります。
災害による破損の修繕も貸主負担のため、敷金から支払う必要はありません。
敷金返還請求をする方法
敷金返還請求はどのように行えば良いのか、ここでは3つの方法をご紹介します。
まずは口頭で請求する
敷金返還請求を行う場合、まずは貸主に対して口頭で請求する旨を伝えましょう。
そうすることで、貸主は借主が敷金精算内容に不満を持っていると認識します。
多くの場合、借主は貸主が敷金精算内容に不満を持っていても、あまり気にしない傾向にあります。
なぜならそういった不満への対応は、管理会社がしてくれると考えているからです。
そのため貸主に対して返還請求することは、貸主本人に対し当事者意識を持たせるために有効な手段です。
ただし、口頭で請求したとしても、借主が素直に敷金の返還に応じることは非常に稀なケースです。
応じない場合は、冷静に次の手段に移りましょう。
同意しない場合は書面で請求する
口頭での敷金返還請求に応じない場合、次の手段は書面での請求になります。
貸主は、借主が敷金の返還に対し不満を持っていることを理解しつつも、応じなくてもこれ以上の行動に移すことはないだろうと考える場合があります。
そうした場合には、内容証明郵便を使用した返還請求を行いましょう。
内容証明郵便は、「いつ」「誰が」「どのような内容」の郵便を送ったのかを郵便局が証明してくれるものです。
内容証明郵便を使った敷金返還請求は、ここで応じてくれなければ裁判も辞さないという強い覚悟を持っていることを相手に伝えることが可能です。
いわば、借主から貸主に対する最終通告なのです。
借主から内容証明郵便が届いた場合、多くの借主は「これ以上応じないとこの借主は本気で裁判するつもりかもしれない」と面倒事を回避するため敷金の返還へと考えが傾き始めます。
内容証明郵便は弁護士や請求金額によっては認定司法書士に依頼することもできますが、自分で作成することも可能です。
最終手段は少額訴訟で返還請求
大抵の場合、口頭や書面で返還請求を行えば、敷金の返還が実現します。
しかし中には、それでも敷金の返還を拒否する貸主も存在します。
そんなときには、最終手段として裁判で返還請求を行いましょう。
裁判と聞くと、大げさに感じてしまうかもしれません。
しかし、敷金の返還請求であれば少額訴訟で対応できます。
少額訴訟とは、1回の期日で審理を終えて判決することを原則としている特別な訴訟手続きで、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できます。
争っている金額に見合った労力や費用で効果的に解決できるよう、手続きも簡易になった訴訟手続きのため、原則1日だけ裁判所に行けば敷金を無事に取り戻せます。
少額訴訟では裁判費用と当事者費用、そして裁判所までの交通費が掛かります。
裁判費用に関しては、勝訴すれば借主側に負担してもらうことが可能です。
その他に返還請求する敷金によって金額が異なりますが、手数料が1,000~3,000円程度発生します。
また、送達費用として裁判所が原告や被告に対して書類送付す際の郵便代金もかかります。
費用は裁判によってまちまちですが、敷金返還請求の少額訴訟の場合、概ね5,000円前後と考えて良いでしょう。
当事者費用では、貸主が法人名義の場合、商業登記事項証明書が必要になりますが、これの取得に600円必要です。
全ての費用合わせても基本的には1万円前後で少額訴訟を起こせます。
まとめ
ここまで、敷金の返還請求権について詳しく解説しました。
敷金の返還請求は5年以内であれば貸主に対して訴えを起こすことが可能です。
原状回復において物件の損傷や汚れの原因が借主にある場合、請求しても返還されないケースもあります。
しかし、経年劣化や災害による破損や汚れの修繕は貸主負担のため、正当な理由がなければ返還の拒否はできません。
敷金の返還請求をする際は、今回紹介した方法を参考に、まずは口頭、次に書面といった具合に段階を踏んで進めていくと良いでしょう。
それでも、借主が返還に応じない場合は、少額訴訟という方法もありますので、諦めずに対応してみてください。