様々な理由によって、毎月の賃料を減額してもらいたいと考える会社や個人事業主の方が増えています。
しかし、賃料は減額してもらえるのか、交渉はどうしたらいいのか分からない方も多いでしょう。
今回の記事では、借賃の増減請求について詳しくご紹介していきます。
賃料増減請求権について知りたい方は、ぜひ目を通してみてください。
目次
借賃の増減請求は可能?
借賃の増減請求は、賃料増減請求権とも言います。
はじめに、賃料増減請求権とはどんな権利なのか説明していきましょう。
賃料増減請求権により賃料の改定は可能
賃料増減請求権は、賃料を改定してもらいたいと求める人が意思表示を行うことで、合理的な賃料に改定してもらえる権利です。
土地や建物の賃貸借契約を長期間で継続する人が多い中、不動産の価値は年々変わっていきます。
不動産の価値は変わっていくにも関わらず、契約を結んだ時の賃料のまま支払い続けるのは不公平になります。
そのため、貸主と借主の公平性を保つために賃料増減請求が定められています。
特約がある場合の注意点
賃料増減請求権が認められるか否かは賃貸契約書の内容に左右されます。
賃貸契約書で確認してほしいのは、賃料不減額特約についてです。
賃料不減額特約とは、一定の期間は賃料を減額しないという特約です。
この特約について記載がある場合、賃貸人からの増額請求は基本的に認められません。
賃料を減額しない場合の特約は賃借人が不利になるので、明記はされないことになっています。
借賃の増減請求権が認められるケース
賃料の増減が認められる要件は、法律上どう定められているのでしょうか?
賃料増減請求権が認められるケースは主に4つあります。
1つずつご紹介していきましょう。
近隣の賃貸相場が下落した時
賃料増減請求は、事情変更の原則に基づいた法規定です。
経済事業の変動以外にも、賃料を決める際に前提となった事情が変わってしまった場合でも、賃料増減請求が認められる場合があります。
例えば、契約を結んだ時は近隣で再開発の計画があったが、契約をした後に中止された場合などは賃料増減請求が認められる可能性があります。
また、近くの物件の賃料相場が下落した時も賃料増減請求が認められる可能性が高いです。
しかし、賃料の決定は当事者の個別事情を元に決められている場合もあるので、近隣の賃料相場が下がったからと言って、必ずしも認められるという訳ではありません。
不動産に対する税金やその他負担が増減した時
借地借家法第11条第1項及び第32条第1項では、土地や建物の税金や、その他の負担が増減した際にも賃料増減請求が認められると記載されています。
あくまでも、経済事情の変化や賃料の不相当などによって賃料増額請求が決められているので、その点は注意してください。
経済事情が変動した時
土地や建物の価格変動、物価や所得水準の変動など、賃料と関連がある事情が起きた場合も賃料増減請求が認められます。
同法第11条第1項及び第32条第1項に記載されている変動や制限についての内容は、全て考慮されるべきとしています。
不可抗力により建物の使用や収益ができなくなった時
借主に過失や故意がなく、建物が使用・収益ができなくなった場合は賃料増減請求が認められます。
不可抗力とは、地震や集中豪雨などの自然災害で建物が使えなくなるケースを指します。
他にも、緊急事態宣言などで休業要請を受けて店舗で営業ができなくなった場合も含まれます。
借賃の増減請求の流れ
賃料増減請求の交渉を行う際は、事前の準備が必要です。
交渉を行う際の流れについてご紹介していきます。
内容証明郵便で意思表明
内容証明郵便とは、何月何日に誰がどんな内容の文書を送ったか証明するための日本郵便のシステムです。
法的な効力があるという訳ではありませんが、訴訟を行う際などは証拠として認められるものです。
賃料増減請求を行う際は、貸主に意思表示が伝わった時点で法的な効果が発生します。
そのため、意思表示をした日を記録として残すことが大切です。
内容証明郵便を送る際は、貸主がどのように感じるかを考慮して書くようにしてください。
賃貸人と賃借者で交渉
内容証明郵便を送った後は、賃貸人と賃借者で交渉を行います。
話し合いの場では、内容証明郵便に記載した内容に沿って説明をしていきましょう。
賃料についての合意ができた場合は、減額を開始する月や減額期間などについても詳しく決めていきます。
全ての内容に合意できたら、書面にまとめてお互いの押印をして保管しておきましょう。
調停
賃料増減請求では、訴訟を提起する前に簡易裁判所に対して民事調停の申立を行わなければいけません。
原則として、物件の所在地を管理している簡易裁判所に申し立てをします。
調停委員が賃貸人と賃借人の意見を聞き、仲介や調整を行って解決を目指していきます。
当事者の間で合意となった場合は、調停成立となります。
しかし、調停の最中には合意できず、決着がつかなかった場合は不成立となります。
訴訟
調停では不成立になってしまったが、どうしても賃料を減額してほしいという場合は賃料増減請求の訴訟を提起できます。
訴訟を起こす場合、高額な費用がかかるということ、結果的に採算が取れない可能性があるということを頭に入れておいてください。
訴訟は長期化することが多く、費用面はもちろん、時間や精神面でも負担が大きくなってしまいます。
訴訟のリスクを理解し、本当に訴訟を起こすのかしっかりと考えてから行動に移しましょう。
まとめ
ここまで、借賃の増減請求について詳しくご紹介してきました。
借賃の増額請求は賃料増減請求権と言われており、賃料を改定してもらいたいと求める人が意思表示を行うことで、合理的な賃料の改定を行うための権利です。
建物の価値に基づいて、賃貸人と賃借人の公平性を保つために定められています。
賃料増減請求権を求める方は、認められるケースや、借賃の増額請求の流れについて理解しておきましょう。
賃料減額請求を行う際は、賃貸人との信頼関係を崩さないように進めていくことが大切です。