投資目的でマンション購入を検討する時、減価償却に関する知識が必要になります。
上手に活用すれば節税も可能な減価償却ですが、計算方法は少し複雑です。
そこで今回はマンションの減価償却について、考え方や計算方法などを解説していきます。
マンション購入を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
マンションの減価償却とは?
長期に渡り保有する固定資産について、耐用年数に応じて経費計上する仕組みを減価償却といいます。
そのため、投資目的で購入したマンションも減価償却の対象です。
では、マンションの減価償却とはどのような特徴があるのかみていきましょう。
減価償却にはどのような費用が含まれるのか
マンションを購入した費用は経費として認められ、耐用年数によって定められた年数で減価償却(経費計上)していきますが、購入にかかった費用のすべてが経費として認められるわけではありません。
減価償却の対象となるのはあくまで建物部分だけで、土地は対象にはなりません。
建物は年月によって破損や摩耗といった劣化が起こりますが、土地にはそういった経年劣化が起こらないため、減価償却の対象とならないのです。
そのため、投資目的でマンションを購入する場合は全体の購入額だけでなく、建物の価格がどれくらいなのかも確認しておく必要があります。
耐用年数によって変動することを知っておこう
マンションの建物部分について経費計上が可能ですが、購入した年に一括でできるわけではなく、耐用年数によって定められた年数で分割して行います。
耐用年数とは、その資産が使用できる期間のことで、丈夫な資産ほど長いです。
住宅用の建物では、木造モルタル造だと20年、木造合成樹脂造だと22年となっており、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造だと47年と決まっています。
さらに、設備部分については15年です。
この耐用年数とは、減価償却などの費用計算や売買の際に目安となるもので、その資産の寿命を指しているわけではありません。
耐用年数を過ぎたからといって使用できなくなったり、処分しなければならなかったりするわけではないので安心してください。
減価償却の計算方法
では、実際にマンションの減価償却をする際、どのように計算したらいいのでしょうか?
2016年4月以降に購入したマンションについては「取得費×償却率」によって算出する、定額法という方法で減価償却することが定められています。
償却率は国税庁が管理しており、耐用年数47年の償却率は「0.022」15年では「0.067」です。
それぞれシーン別の計算方法をみていきましょう。
新築マンションの場合
建物価格2,000万円・設備500万円の新築マンションを購入した場合の償却費は以下の通りです。
建物:2,000万円×0.022=440,000円
設備:500万円×0.067=335,000円
1~15年目までの償却費:440,000円+335,000円=775,000円
16~47年目までの償却費:440,000円
耐用年数15年の設備に関しては、16年目以降は減価償却できませんので、建物分のみの計上となります。
中古マンションの場合
では、中古マンションを購入した場合の償却費用はどのように計算するのでしょうか?
中古の場合はまず、以下の計算式により耐用年数を確認しなければなりません。
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2
ここでは築10年の中古マンションを建物1,000万円、設備200万円で購入したと想定して計算していきます。
まずは上記計算式に当てはめ、耐用年数を計算しましょう。
建物の耐用年数:(47-10)+10×0.2=39
設備の耐用年数:(15-10)+10×0.2=7
建物の耐用年数は39年、設備は7年となり、国税庁による償却率に照らし合わせると建物が「0.026」、設備が「0.143」となります。
建物:1,000万円×0.026=260,000円
設備:200万円×0.143=286,000円
1~7年目までの償却費:260,000円+286,000円=546,000円
8~39年目までの償却費:260,000円
設備の償却が終わる8年目以降は建物のみの経費計上となります。
取得目的によって償却率が異なる
投資目的のようなマンション購入や、個人事業主が店舗や倉庫、事務所などに使用するために個人で購入する、いわゆる事業用不動産と、マイホームとして購入する非事業用不動産では耐用年数も償却率も異なります。
たとえば鉄筋コンクリート造のマンションを事業用に購入した場合の耐用年数は47年ですが、非事業用では1.5倍の70年となっており、償却率も事業用では「0.022」に対して非事業用では「0.015」と低いです。
これは購入背景を考慮したもので、利益を得るために売買を行う事業用と、マイホームの購入である非事業用では目的が異なるためで、非事業用で購入した場合は少ない税金で済ませられるよう配慮がなされているのです。
h2:修繕費などはどのように計算する?
投資目的でマンションを購入した場合、大規模修繕のような定期的な修繕や、故障や老朽化した設備の交換などが発生します。
そういった費用はどのように減価償却費にどのような影響があるのでしょうか?
修繕費か資本的支出かによって変わる
修繕や設備交換にかかった費用は「修繕費」か「資本的支出」に区分されます。
修繕費であれば必要経費として全額をその年の経費に計上できますが、資本的支出となった場合は資産扱いになるため、減価償却の対象となります。
目安としては“20万円未満で3年以内ごとに行われる”修繕であれば修繕費と区分される場合が多いですが、判断が難しいため、税務署などに相談することをおすすめします。
少額減価償却資産の特例に該当する場合もある
青色申告をしている個人事業主であれば「少額減価償却資産の特例」を受けられる場合があります。
少額減価償却資産の特例とは、1つ(または1組)あたりの金額が30万円未満の備品・設備であれば耐用年数で減価償却せずに、購入した年に一括で経費計上ができる制度のことです。
この制度は青色申告者しか利用できませんが、10万円以上20万円未満の資産について、その耐用年数にかかわらず3年で減価償却できる「一括償却資産の特例」であれば白色申告者でも利用可能です。
まとめ
今回はマンションの減価償却について、考え方や計算方法、修繕費の扱いをご紹介しました。
投資目的でマンションを購入する場合、購入費用を経費計上できる減価償却の知識は重要です。
仕組みを正しく理解し、不動産投資に役立てましょう。