富裕層について“お金持ち”といった漠然としたイメージを持つ人も少なくないでしょう。
確かに、富裕層は多くの資産を持っている人を指した言葉ですが、どんな定義があるのかご存じでしょうか?
そこで今回は富裕層について、定義や特徴をご紹介します。
目次
「富裕層」には公的な定義はない
いわゆる“お金持ち”を表す言葉としてよく使われる「富裕層」ですが、実は、どれくらいの資産があれば富裕層なのかという具体的な定義はありません。
そのため、調査機関によって基準が異なってしまっているのが現状です。
日本では野村総合研究所が富裕層について長く調査を行っているため、その基準を参考とする機関も多いです。
野村総合研究所の定義する「富裕層」
野村総合研究所による富裕層の定義は5段階あり、「純金融資産保有額」によって階層を分けています。
「純金融資産保有額」とは、世帯として保有する預貯金・株式・債券・投資信託・一時払い生命保険や年金保険などの金融資産から負債を引いた額を指します。
ここに土地や建物といった不動産は含まれず、単純に現金化できる財産をどれくらい持っているかで判断しているのが特徴です。
では、5段階別の定義と、その「純金融資産保有額」をみてみましょう。
・超富裕層:5億円以上
・富裕層:1億円以上5億円未満
・準富裕層:5千万円以上1億円未満
・アッパーマス層:3千万円以上5千万円未満
・マス層:3千万円未満
この階層別定義からすると、富裕層とは「すぐに現金化できる財産を1億円以上持っている人」ということになります。
富裕層はどれくらいいるの?
現金化できる財産を1億円以上も持つ、文字通り“お金持ち”の富裕層は日本にどれくらいいるのでしょうか?
野村総合研究所によると超富裕層と富裕層の割合は日本の人口の2%程度だそうです。
準富裕層を含めても8%程度にしかならず、決して多いとは言えないでしょう。
どれくらいの年収があれば富裕層になる?
野村総合研究所の定義する富裕層は「純金融資産保有額」を基にしており、その人の収入については触れられていません。
では、どのくらいの年収があれば富裕層と判断されるのでしょうか?
一般的に2千万円以上とされることが多い
富裕層かそうでないかの分かれ道は年収2千万円を超えるかどうか、とする意見が多いようです。
また、3千万円以上の税金を納めていれば富裕層とする考え方もあり、これは年収に置き換えると1億円を超えることになります。
世界に比べて日本は富裕層が多い?
かつては1億総中流社会といわれた日本は世界に比べると富裕層は少ないのでは、と思う人もいるでしょう。
世界最大規模の金融機関である「クレディ・スイス」による国別超富裕層ランキングで日本は196ヵ国中8位と、かなりの上位にいることがわかります。
ただし、クレディ・スイスの定義する超富裕層は「日本円換算で約54億円以上を持つ人」となっており、野村総合研究所の定義とは異なります。
さらに、成人一人当たりの資産額ランキングでは日本はトップ10入りしておらず、格差が広がる日本の状況を反映した結果といえるでしょう。
富裕層と資産家はどう違う?
お金持ちを表す言葉として富裕層とともによく使われるのが「資産家」ですが、富裕層とはどういった違いがあるのでしょうか?
一般的に“財産を多くもっている人”とされる資産家も富裕層と同様に、はっきりとした定義はありません。
ただ、資産“家”と表現されることからも一個人ではなく、一族全体を指す場合もあります。
祖先が地主や創業者で、代々資産を受け継いできた一族であれば立派な資産家といえるでしょう。
富裕層との大きな違いは、その資産の中に不動産が含まれる点です。
代々世襲経営を続ける企業の経営者や、地主として先祖代々、地域の土地を持っている人などは現金などの金融資産は少なくても、土地や建物といった実物資産を多く持っています。
この場合、個人としての年収や金融資産は少なくても資産家と呼んで差し支えないでしょう。
富裕層は金融資産を多く持つ人、資産家は実物資産も合わせて多く持つ人、といった違いがあることがわかります。
富裕層の特徴ってあるの?
多くの金融資産を持つと定義される富裕層ですが、富裕層には共通する特徴がいくつかあるようです。
持ち物はTPOで使い分ける
「お金持ちは時計と靴を見ればわかる」「本当のお金持ちは質素」など、お金持ちを判別するポイントを説く人もいますが、これは一概には言えないというのが正解でしょう。
なぜなら、富裕層は必然的に人づきあいが多く、社交の場にも慣れているため、TPOに合わせて持ち物を使え分けられるからです。
華やかな社交の場ではマナー違反にならないような格好をしますが、日常的に一目見て高級ブランドとわかるようなものをこれ見よがしに持ち歩いたりしません。
健康意識が高い
富裕層は健康に気遣う人が多いというのも特徴の一つです。
ビジネスの場で高いパフォーマンスを発揮するには強いメンタルが必要になります。
そのため、メンタル面の管理は欠かせず、定期的に精神科へ通う人も珍しくありません。
体力づくりのためにジョギングを日課にしたり、質の良い睡眠や食事といった健康に気を遣ったり、運動をすることでオンオフを切り替えたりと、自分を過信することのない謙虚さや慎重さが富裕層として成功するカギなのかもしれません。
コロナ禍のような状況でも冷静
日本のみならず世界経済に大きな影響を与えた新型コロナウイルスですが、富裕層も例外ではありませんでした。
経済の先行き予測だけでは回避できない損害を被った富裕層もいます。
それに対して野村総合研究所が行ったアンケートには「元本割れする可能性のある金融商品のリスクを気にするようになった」「自分の考えだけでは限界を感じ、信用できる専門家を探した」「自身が管理する資産に関して以前よりも情報収集や勉強をするようになった」といった回答が寄せられたそうです。
コロナ禍のような事態を成長のチャンスととらえられる視野の広さが富裕層の特徴といえるでしょう。
まとめ
今回は富裕層について、その定義や特徴などをご紹介しました。
明確な定義の存在しない富裕層ですが、多くのお金を持った人というのは確かなようです。
しかし、世の中にはお金は持たないもののお金を生み出す仕組みは持っている、といった人もいます。
基準を何にするのかによって豊かさの判断が変わることを知っておく必要があるでしょう。