マンションに入居している中で、大規模修繕を行う時期を迎える場合があります。
賃貸マンションの場合は、大規模修繕の手配は物件のオーナーがしてくれるので問題ありません。
しかし分譲マンションの場合は、各部屋の所有者が中心となる管理組合が主導となって行うので、入居者がまったく無関係というわけではないのです。
今回は、マンションの大規模修繕の概要や大規模修繕で起こり得るトラブル事例、トラブルを未然に防ぐ方法、トラブルが起きてしまった時の対処法について解説していきます。
また、管理組合で依頼先の業者を選ぶ時に押さえておきたいポイントもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
マンションにおける「大規模修繕」とは?

まずは、マンションの大規模修繕がどのようなものかみていきましょう。
マンションの大規模修繕について
マンションの大規模修繕は、長期的な計画を立てた上で行われる補修工事です。
修繕対象となるのは、屋上や外壁、バルコニー、廊下などの共用部分となっています。
場合によっては改修工事を行う場合もあります。
実施するスパンはマンションによりますが、12~16年程度の周期で行われるケースが多いです。
安全に生活できる環境を維持するために重要な役割を担っています。
賃貸マンションであればオーナーが手配などをしてくれますが、分譲マンションの場合は管理組合が中心となって行うのが一般的です。
管理組合の中でも中心的な存在になるのは、理事会や修繕委員会のメンバーですが、入居者の協力がなければ実行できません。
修繕工事と改修工事には、以下のような違いがあります。
修繕工事
修繕工事は、経年劣化や外的要因によって不具合が発生した建物、建物を構成する一部の部材などの修理や取り換えなどの処置を行う工事です。
問題がある部分の性能や機能を支障のない状態まで回復させることが目的です。
リフォームというとイメージしやすい方も多いでしょう。
改修工事
改修工事は、築年数が経過して劣化が進んでいたり、何らかの理由で不具合が発生していたりする場合に行われます。
建物の一部や設備、部材などの修理や取り替え工事を行うのです。
修繕工事よりも規模が大きい工事で、リノベーションというとイメージしやすい方も多いでしょう。
なぜマンションの大規模修繕が必要なのか?

マンションを維持するためには、大規模修繕が必要になります。
しかし、その必要性についていまいち理解していない人もいると考えられます。
そこで続いては、マンションの大規模修繕の必要性についてみていきましょう。
設備の不具合によって生活に支障をきたさないようにするため
マンションに設置されている設備は、メンテナンスを怠ると突然使えなくなってしまう可能性があります。
特に不具合が生じると不便に感じてしまうのは、給排水設備の故障です。
ある日突然水道が出なくなってしまったり、トイレが流せなくなってしまったりします。
そのような事態に陥ってしまうと、生活に支障が出てしまいます。
また、エレベーターなどの電気系統や機械式駐車場なども、メンテナンスを怠ると突然不具合が発生するリスクがあるので注意しなければいけません。
エレベーターが途中で止まってしまった、自分の車を車庫から出せなくなってしまった、という事態が起こる可能性もないとは言い切れないでしょう。
マンションの資産価値を下げないため
大規模修繕を怠ったマンションは、経年劣化などによる不具合が増えてしまいます。
また、外観もボロボロになっていくので、マンションの資産価値も下がってしまうのです。
資産価値が下がると、誰かが売りに出したとしてもなかなか買い手が見つからなくなります。
故障や不具合が生じるだけではなく、設備も古くなるので生活の利便性も低くなってしまうでしょう。
暮らしやすさが損なわれれば、かつての金額で売りに出しても売れない期間が長くなり、値下げせざるを得なくなります。
外壁が劣化してしまえば、タイルの落下事故が起こるリスクも高まります。
事故やトラブルを未然に防ぐためにも、マンションの大規模修繕は必要不可欠です。
【準備編】大規模修繕で起こり得るトラブル事例

大規模修繕で起こり得るトラブルは、それぞれの段階によって異なります。
ここでは、準備の段階で起こる可能性があるトラブルをご紹介します。
管理組合内でのトラブル
分譲マンションの大規模修繕を行う際に中心となって動くのが管理組合です。
特に、管理組合の中にある修繕委員会がメインとなるケースが多いです。
修繕委員会内で多くみられるトラブルには、全員で集まれる時間がなかなかとれない、意見をまとめられない、といったものがあります。
効率的に話し合いを進めるには、5人程度で構成するのが望ましいです。
人数が少なすぎても、多すぎても円滑に進めるのが難しくなります。
意見をまとめるのが難しくなる原因には、全員で話し合いをする時間を確保できないだけではなく、大規模修繕に関する知識を持つ人が少ないことも挙げられます。
知識が乏しいままだと、どれだけ話し合いの時間を設けたとしても、埒が明かなくなってしまうでしょう。
そうなることを防ぐには、専門的な知識を持つ第三者機関への依頼も視野に入れる必要があります。
修繕積立金に関するトラブル
一般的な分譲マンションの場合、長期修繕計画を元にして入居者から修繕積立金を集めます。
そのお金を使って修繕工事を行います。
しかし近年、長期修繕計画に不備があったり、入居率が低下したりすることで、修繕積立金が思ったように集まらないケースが増加しているのです。
修繕積立金が不足している場合、以下のような対処法を検討する必要があります。
・不足している分を一時金として集める
・金融機関から借入を行う
・修繕積立金を値上げする
一時金の徴収や修繕積立金の値上げをする場合は、入居者に事情を説明し、納得してもらわなければいけません。
金融機関から借入を行った場合も、返済金を入居者から徴収することになります。
不足額が大きくなるほど入居者からの理解を得ることが難しくなってしまうので、定期的な長期修繕計画の見直しを行い、適切な金額の修繕積立金を徴収することが重要です。
【施工編】大規模修繕で起こり得るトラブル事例

大規模修繕工事の施工中にもトラブルが起こる可能性があります。
施工中に起こり得るトラブルには、以下のようなものが挙げられます。
工期に関するトラブル
大規模修繕工事は、工事が始まる時におおよその工期を知らせてもらえます。
基本的には、その工期内に完了しますが、時には大幅に遅延してしまう可能性もあります。
工期が遅延する大きな理由は天候です。
雨天時には工事を中断するケースも多いので、雨が続くと必然的に長引いてしまいます。
梅雨など天候が安定しない時期に工事を行う場合は、特に注意が必要です。
また、工事が始まってから設備の仕様や建材などのグレードを変更した場合も、工期が伸びてしまいます。
大幅な遅延を避けるためには事前の打ち合わせをしっかりと行い、工事の内容はなるべく変更しないようにするのが工期に関するトラブルを避けるポイントです。
騒音や臭い、ホコリに関するトラブル
騒音や臭い、ホコリに関するトラブルも、マンションの大規模修繕工事で多くみられます。
補修工事に使う機械の音やコンクリートを削る音、機械による振動、工事によるホコリ、塗料の臭いなどが発生するケースも往々にしてあるでしょう。
足場や養生ネットを設置することで、洗濯物を干しにくくなった、日当たりが悪くなったなどのクレームが寄せられる可能性もあります。
できるだけ生活に支障が出ないように作業をしてもらえますが、騒音や臭い、ホコリをゼロにすることはできません。
そのため、入居者からの理解や協力を得ることは必要不可欠です。
施工中のトラブルを回避するには、工事前の説明会で丁寧に説明し、理解を促すようにしてください。
質問や疑問に関しては、施工会社と協議してしっかり回答するのは当然です。
何らかの意見が出た場合は速やかに施工会社と対策を協議し、知らせるようにしましょう。
プライバシー問題
大規模修繕では足場を設置するので、外にいる作業員から室内が見えるようになります。
他人から室内を見られるのは気持ちが良いものではないので、オーナーや管理組合、施工会社による事前説明では作業中にカーテンを閉めるようにお願いするのが無難です。
しかし中には、カーテンを閉めずにプライバシーの侵害を訴えてくる入居者もいます。
そのような時は、再度カーテンを閉めるように依頼したり、作業員の視線が室内に向かないように配慮してもらったりするなどの対策が必要です。
空き巣被害
大規模修繕工事では外壁全体の修繕なども行うので、足場がかけられます。
足場は、工事が終わるまで設置されたままになるため、誰でも窓から入り込めるようになります。
また、業者が出入りするのでオートロックを開けっぱなしにしたり、人の出入りが多くなったりするので、空き巣犯にとって好条件が揃った状態だと言えるでしょう。
空き巣被害が発生する原因には、防犯意識の低さもあります。
空き巣に入られることを考慮し、施工会社と協力することが対策として効果的です。
特におすすめなのは、以下のような対策です。
・防犯カメラを設置する
・窓サッシ用補助鍵を設置する
・サーチライトを設置する
・作業員は共通の服や目印を身に付ける
死角になってしまう場所は、防犯カメラやサーチライトを設置するのが効果的です。
窓サッシ用補助鍵は、入居者に無料で貸し出すケースが多くなっています。
作業員が共通の服や目印を身に付けることで、不審者を見分けるために効果的な方法だと言えるでしょう。
工事車両の駐車や出入りに関するトラブル
工事車両の駐車や出入りに関するトラブルも発生するケースがあります。
駐車しているトラックが道をふさいでいたり、工事車両の出入りが多くて迷惑だと感じたりするといった内容です。
入居者の生活が不便になる可能性もありますが、近隣住民の生活にまで支障をきたしてしまう可能性があります。
工事車両が駐車する場所や出入りする時間は、入居者にも周辺住民にも説明し、理解を得ることが重要です。
入室が必要な作業に関するトラブル
マンションの大規模修繕工事では、ドアやサッシを交換したり、給排水管の補修を行ったりするため、専有部に業者が立ち入る可能性があります。
前もってお知らせしますが、「入室するのはやめてほしい」とかたくなに拒む入居者がいる場合もあるでしょう。
トラブルを回避するには、施工会社や管理組合が一方的に日時を指定するのではなく、入居者の希望日時に合わせるようにしたり、最低限の入室時間で作業を済ませる方法はないか検討したりすることがポイントです。
そうすることで、協力してもらえる可能性が高くなります。
また、作業員の服が汚れていて室内が汚くなってしまった、在宅中にもかかわらず突然入ってきた、などもあります。
基本的なマナーではありますが、入室時の服装や入室する時の手順なども細かく決めるようにしましょう。
危険な場所に近づいて子どもがケガをするトラブル
大規模修繕中はマンションが工事現場となります。
そのため、重たい資材や塗料など、使い方を誤ると危険なものがたくさん置かれています。
立ち入り禁止の看板やカラーコーンなどが置かれている場所には、近づかないようにしましょう。
特に子どもがいる場合は注意が必要です。
珍しい車などがあると興味本位で近づいてしまう可能性があるためです。
子どもに対する注意喚起は簡単ではありませんが、子ども向けの説明会を実施するなどの工夫を凝らしてみてください。
それぞれの家庭で危険性について話してもらうのも効果的です。
追加工事に関するトラブル
大規模修繕で行う工事項目には、地上からだと確認が難しい外壁のひび割れやタイルの浮きなどの補修も含まれます。
それらは足場を組んでみないと詳しい状況がわからないので、見積もりの段階でおおよその金額しか算出されません。
詳しい料金は、足場を組んでから判明します。
足場をかけてから実際の数量を確定する実数積算というやり方を採用している施工会社も少なくありません。
そのため、準備段階で聞いていた金額より増減する可能性も大いにあります。
また、着工後に思ってもいなかった不具合などが判明し、追加工事が必要になるといったパターンもあります。
そのような事態を避けるには、大規模修繕工事の前に建物診断を行うのが望ましいです。
ベランダやバルコニーに関するトラブル
それぞれの部屋にあるベランダやバルコニーが工事範囲に含まれている場合もあります。
そのような場合、ベランダなどにある私物は一旦片付けてもらわなければいけません。
しかし、あらかじめ通知していても対応してくれないケースもあります。
私物が置きっぱなしになっていると工事を進めることができず、遅延につながってしまいます。
ベランダやバルコニーは専有部分だと思われがちですが、実は共用部分です。
そのため、すぐに移動できないものを置くのは避け、大規模修繕工事の時は入居者も協力すべきです。
【施工後編】大規模修繕で起こり得るトラブル事例

大規模修繕の施工が終わったからといって安心できるとは限りません。
施工後にも大規模修繕を巡ってトラブルが発生する可能性があるため注意が必要です。
ここでは、施工後に起こり得るトラブル事例をご紹介します。
思っていた仕上がりと違う
完成した建物を見て、想像していた仕上がりと違うとトラブルになることがあります。
特に冊子のサンプル集だけを見て決めたり、屋内で小さなサンプルを確認するだけだったりした場合起こりやすいです。
色や素材を決める際は、実際のサンプルを事前に取り寄せるなどして、確認しましょう。
また、サンプルを取り寄せた時は、外で色味をチェックすることも大切です。
同じ色でも蛍光灯と太陽光の下では見え方が異なりますし、日向か日陰かでも色の感じ方は変わります。
そのため、サンプルは実際の環境となるべく近い環境で、確認することが望ましいです。
工事前に本番と同じ材料や工法を用いて部分的に施工する試験施工が可能な場合は、実施しておくと安心です。
きちんと補修されていない
大規模修繕によって見た目は綺麗になっても、劣化部分が適切に補修されていないケースもあります。
このような場合、問題箇所の症状がすぐに再発してしまい再度補修が必要となるため、余分な手間や費用がかかる可能性があります。
マンションの大規模修繕は莫大な費用がかかることから、どうしても費用に重きを置いて施工会社を選びがちです。
しかし、いくら他より費用が安くても、追加で補修や手間がかかれば意味がありません。
むしろ更なるトラブルを招いて疲弊する可能性もあることから、施工会社を選ぶ際は、これまでの施工実績をはじめ、スキルや経験値、対応力なども考慮した上で判断することが大切です。
また、大規模修繕では工事が終わっても、保証年数に応じてアフター点検を行っているところが多く、施工会社との付き合いは続きます。
余計なトラブルに巻き込まれないためにも、工事中はもちろん、工事後も安心して建物のことを任せられる施工会社を選びましょう。
マンションの大規模修繕トラブルを未然に防ぐには?

マンションの大規模修繕では、準備中から施工後まで、あらゆる場面でトラブルが発生する可能性があります。
こうしたトラブルを未然に防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。
以下では、大規模修繕トラブルを未然に防ぐためにできることをご紹介します。
居住者に徹底して事前告知を行う
あらかじめ居住者への事前告知をしておくことも有効な手段の1つです。
基本的に事前告知は施工会社が対応してくれます。
しかし、未然にトラブルを防ぎたいなら、任せっきりにするのではなく、皆で協力することも大切です。
なお、有効な告知方法は以下のとおりです。
・各居住者のポストに、工事の日程表を投函する
・エントランスにホワイトボード等を設置し、工事状況をリアルタイムで共有する
工事の日程表は、必ず全入居者の手に渡るように手配しましょう。
文書としてしっかり残すことで、情報の行き違いを防ぐ効果が期待できます。
また、必ず入居者が通るエントランスに掲示板を設置すれば、工事に関する情報共有がしやすいです。
さらに、更新や書き直しも容易なため、リアルタイムでの告知に役立ちます。
近隣住民への挨拶やお知らせを行う
入居者だけでなく、近隣住民に対しても、事前に挨拶やお知らせをしておくことが大切です。
工事日程や内容はもちろん、騒音や匂いが発生する期間がある場合は、文書だけでなく、直接お伝えするとトラブル防止効果が期待できます。
また、工事に関する意見や質問に対応する連絡先を伝えておくのも1つの方法です。
事前に誠意を持って対応することで、大きな問題に発展する前に、トラブルの芽を摘むことが可能です。
なお、大規模修繕では工事車両の出入りが増えることから、近隣住民が不満を募らせるパターンも少なくありません。
特に、近隣道路などに無断駐車したことで、トラブルに発展した事例は多々あります。
例え短い時間だとしても、近隣住民への妨げになるような場所には駐車しないよう徹底しましょう。
瑕疵保険に加入している業者から選ぶ
瑕疵保険とは、施工会社の手抜き工事を阻止することを目的とした、検査と保証がセットになった保険のことです。
第三者である建築士が施工前後にチェックしてくれるため、瑕疵保険に加入している業者を選べば、施工不良や倒産によるトラブルを未然に防ぐことが可能です。
また、万が一検査で不具合が見つかった場合は、保険金が支払われるため補修工事費用に充てられます。
保険会社によって保証内容は異なるため、加入の有無を確認する際は、保証内容もチェックしておくと安心です。
優良業者を選ぶ
大規模修繕工事を行う際は、信頼できる優良業者を選ぶことも重要です。
なお、優良かどうかを判断するポイントは以下の3点です。
・大規模修繕工事の実績が豊富である
・サービスの質が高い
・現場監督や従業員の対応が丁寧
下記では、それぞれの内容について詳しく解説します。
豊富な実績を持つ
大規模修繕に関する豊富な実績を持つ業者なら、安心して依頼できるでしょう。
マンションの大規模修繕は、戸建て住宅やアパートに比べて工事期間が長いです。
さらに、入居者はこれまでと同じように生活している中で行う必要があるため、実績が豊富でノウハウを持つ施工業者の方が、工事をスムーズに進められるのはもちろん、トラブルにつながるリスクを抑えられます。
なお、実績が豊富かどうかは、ホームページやSNSをチェックしたり、直接問い合わせしたりして確認すると良いでしょう。
また、問い合わせした際は、これまで請け負った物件を紹介してもらい、自分の目で確認するのもおすすめです。
サービスの質が高い
大規模修繕によるトラブルを避けるには、サービスの質が高いかどうかも重要なポイントです。
ここでいうサービスの質とは工事内容や技術面はもちろんですが、安全対策や入居者・近隣住民への配慮も含まれます。
施工会社を選ぶ際は、入居者や近隣住民へのサポート体制や工事体制、工事後のアフターフォロー体制なども確認しておくと良いでしょう。
対応が丁寧
施工会社を選ぶ際は、問い合わせ時やプレゼンテーションの現場監督や担当者の対応が丁寧かどうかも確認しておきましょう。
特に、現場を指揮する現場監督の人柄やコミュニケーション能力は、工事の質はもちろん、円滑に進むかどうかにも大きく影響します。
相談に親身になって対応してくれるか、入居者や近隣住民への配慮はあるかなど、事前にチェックしておくと安心です。
長期修繕計画を定期的に見直す
長期修繕計画を定期的に見直すことで、金銭面でのトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。
一般的に、マンションの大規模修繕は、長期修繕計画に基づいて行われます。
しかし、長期修繕計画は、計画当初の段階での工事費用に基づいて算出するため、時間の経過とともにずれが生じます。
想定していたよりも建物の劣化が激しければ、修繕費用は高くなるからです。
また、資材の高騰や人件費の上昇など、社会情勢の変化も工事費に影響を与えます。
そのため、実際に工事を行う際には計画よりも費用がかさみ、修繕積立金では足りないケースも少なくありません。
そうなれば、追加徴収を検討しなければならなくなり、入居者の負担が増えるため、トラブルに発展する恐れがあります。
特に、急に多額の費用を追加で必要になった場合、揉める可能性が非常に高いため、そうならないためにも、長期修繕計画は定期的に見直し、修繕積立金が不足するリスクを減らすことが大切です。
マンションで大規模修繕のトラブルが起きてしまったらどうする?

事前に対策を行っても防ぎきれず、トラブルが発生した場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
ここでは、自分達では解決が難しいトラブルが起きた場合の対処法をご紹介します。
公益財団法人マンション管理センターに相談
大規模修繕によって、自分たちで解決するのは難しいトラブルが起きた場合、「公益財団法人マンション管理センターに相談しましょう。
マンション管理センターでは、大規模修繕や管理組合の運営に関する相談に無料で対応しているほか、修繕積立金算出や長期修繕計画作成も良心的な価格で請け負っています。
トラブル相談にも管理規約や法令を参考に、中立的な立場からアドバイスしてもらうことが可能です。
どのように対応すれば良いのか悩んだ時は、ぜひ活用してみてください。
実績のある弁護士に相談
施工業者との間でトラブルが発生した際は、弁護士に相談するのも有効です。
大規模修繕工事では、施工不良や水増し修繕、不可解な水増し修繕、個人所有物の破損など、施工業者とトラブルになることも珍しくありません。
話合いによって解決できれば良いのですが、必ずしも穏便に進むとは限りません。
むしろ、これまでの経験値の違いから不利な立場に立たされる可能性が高いため、解決が難しいと感じたら、業者とのトラブルに詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
経験豊富で実績のある弁護士ならば、法律に関する適切なアドバイスを受けられるほか、施工業者との交渉にも代理人として対応することが可能です。
安心してマンションに住み続けるためにも、悩んだ時は実績のある弁護士に相談しましょう。
マンションの大規模修繕を任せる業者の選び方

最後にマンションの大規模修繕を安心して任せられる業者はどうやって選べば良いのか、選び方のポイントをご紹介します。
関係者と密接な関わりのある業者は避ける
業者探しをしていると、管理会社や管理組合から紹介したいと声がかかることがあります。
施工業者に詳しくない場合、つい甘えてしまいたくなるでしょう。
しかし、関係者と密接な関係ある業者に依頼し、万が一トラブルになった場合、他の入居者から適正性を疑われたり、余計な気を使ってしまったりと難しい対応を迫られる可能性があります。
新たなトラブルを招く恐れもあるため、関係者と密接な関わりのある業者は避けた方が無難です。
建設業許可をきちんと取得している
マンションの大規模修繕工事で外壁塗装や防水塗装を行うには、専門工事の建設業許可が必要です。
きちんと許可を取得している業者か確認しましょう。
価格によってはなくても工事することは可能です。
しかし、許可を取得するには、実務経験や資格が必要なため、保有している業者=スキルやノウハウ面で信頼できる会社と言えるでしょう。
見積書の内容が詳しく記載されている
見積もりを依頼する際は、見積書の金額だけでなく、記載されている内容も詳しくチェックしましょう。
詳しい工事内容や価格の詳細を書かず、まとめて記載している業者は、後から必要のない工事を追加し、費用を水増しする恐れがあります。
また、不明点について質問しているのに曖昧にかわしたり、丁寧に対応してくれなかったりする業者も注意が必要です。
明確に提示しなければならない見積書の説明をきちんとできない時点で、信頼できないのはもとより、技術力にも不安が残ります。
必要な説明ができない業者は避けた方が無難です。
プレゼンテーションでアピールポイントを見極める
複数の業者から候補を絞ったら、理事会や修繕委員会にて、プレゼンテーションをしてもらいましょう。
プレゼンテーションでは、工事内容や工事価格のほか、会社案内や安全対策等についても説明があるはずです。
また、「低価格で工事を行っている」「社員教育に力を入れている」など、自社のアピールポイントも盛り込んでいるはずなので、どのような会社なのか、信頼して任せられるのかを見極める判断材料に使いましょう。
今回は、マンションにおける大規模修繕について解説するとともに、起こり得るトラブル事例をご紹介しました。
分譲マンションの場合、大規模修繕は各部屋の所有者によって構成される管理組合が主導となって進められます。
そのため、分譲マンションを所有する方にとって、大規模修繕によるトラブルは決して他人事ではありません。
大規模修繕では、準備段階から施工中、施工後も様々なトラブルが起こる可能性があります。
トラブルを未然に防ぐためにも、ぜひ今回紹介した内容を参考に対策を講じることをおすすめします。