修繕積立金とは?将来的に値上げしなければいけないって本当?

修繕積立金

マンションを購入する際、物件の立地や周辺の環境など目的に合った物件選びが重要になります。
それと共に、チェックしておきたいのは毎月支払う「マンションの修繕積立金」です。
修繕積立金は長期的に支払うことになるため、必要経費として把握しておく必要があるからです。
マンションを購入する前に仕組みや会計処理の方法などについて理解しておくとその後の収支計画も安心です。
今回は、マンションの修繕積立金について押さえておきたい知識や会計処理の方法、修繕積立金を値上げする必要性について解説します。
マンションの修繕積立金の特徴や相場など気になっている方はぜひ参考にしてください。

目次

そもそも修繕積立金とは?

修繕積立金

入居者が毎月支払う必要がある費用に管理費や修繕積立金があります。
修繕積立金は、マンションの共用部を維持管理するために積み立てられる費用です。

ここでは、修繕積立金に関する情報と、混同されやすい管理費との違いについて紹介します。

修繕積立金とは、共用部分を長期維持するために必要になる積立費用

修繕積立金とは、分譲マンションの外壁や屋上、屋根、エントランス、エレベーターなどの共用部分を維持、修繕するために行われる「大規模修繕」に使われます。
これらの修繕工事や維持管理に必要となる資金を入居者から毎月徴収して積み立てておく費用が修繕積立金です。

大規模修繕工事は、マンションによっても異なりますが、約10~15年に一度のスパンで定期的に行われます。
大規模修繕工事に必要な資金を一括で徴収してしまうのは、入居者の金銭的負担が大きくなってしまいます。
そのため、毎月設定された修繕積立金を集め、長期にわたって積み立てていくのです。
また、修繕積立金は、管理費と同様に返金されません。
マンションを売却しても、積み立てられた修繕積立金は返金されないので注意しておきましょう。

混同されがちな「管理費」とは?修繕費との違いは使用用途にある

管理費と修繕積立金との違いは「積立金の使い道」にあります。
管理費もマンションの共用部分のメンテナンスに使われる点では修繕積立金と同じです。
しかし、修繕積立金とは使用目的が異なり、主な使用目的は大規模修繕工事が必要ない清掃やゴミ処理などになります。
ここでは、管理費の考え方と積立金の使用目的について紹介します。

管理費とは?

管理費はマンションの共用部分を維持するために使われる費用のことを指します。
毎月入居者から設定された金額を集め、マンションの事務処理、設備やその他共用部分の維持、管理をするために使われます。

管理費は、1戸当たりの月額(予定額)が表示されています。
マンションの住戸によっては管理費の額が異なる場合があるので、確認しておくと良いでしょう。

管理費の主な使用用途について

修繕積立金と管理費の違いは、修繕積立金は大規模な修繕工事に使われるのに対し、管理費は日常的なメンテナンスに使われる点です。
管理費の主な使用用途は以下のとおりです。

・管理組合の運営費 
・建物のエントランスの清掃や電気代、備品、部品の交換
・共用部分などの火災保険料やその他損害保険の保険料
・エレベーターの定期的な点検費や電気代、修理代
・共用部分の水道光熱費
・廊下など共用部分の小修理にかかる費用や電球などの消耗品費
・中庭の植栽の剪定など植栽管理費
・アプローチ(門や道路から玄関までの通路)の清掃など
・ゴミ捨て場の清掃や管理
・インターネットやテレビ回線の使用料
・駐車場の清掃など

上記のように管理費は、入居者が快適な生活を維持するために必要なメンテナンス費として使われます。

修繕積立金の用途について

修繕積立金

管理費と修繕積立金の違いを踏まえたうえで、修繕積立金の使用用途についても紹介しましょう。
修繕積立金の使用用途は国土交通省の「マンション標準管理規約の28条」で定められています。

主な使用目的は下記4つのとおりです。

1.定期的に行われる大規模な修繕工事
2.事故や災害の際、突発的に必要となる修繕工事
3.マンションの敷地や共用部分の改善や改修など
4.建物・敷地の売却あたりの調査費用

それぞれ詳しく確認していきましょう。

1.定期的に行われる大規模な修繕工事

マンションでは、10~15年を目安に大規模修繕工事が行われます。
建物は、年月を重ねるうちにダメージが蓄積されて、劣化していきます。
劣化や傷みが生じたマンションは、メンテナンスや大規模な修繕工事が必要です。
外壁補修や防水工事、屋上の改修、手すりなどペンキの塗り替え費用など大規模修繕をメインに使われます。

2.事故や災害の際、突発的に必要となる修繕工事

地震や台風、津波といった予測不能の自然災害によって、建物の修繕が必要になるケースがあります。
地震で壁に亀裂が入る、豪雨により床下浸水したなど突発的に起こった修繕工事に対しても修繕積立金が使われます。

3.マンションの敷地や共用部分の改善や改修など

マンションの共用部分の改善や、リフォームなどを行う際にも修繕積立金から工事費用に使われます。
集合ポストの取り換えや駐車場の増設、移設、手すりの設置などが挙げられるでしょう。
その他、オートロックや監視カメラの設置など入居者の生活の質が向上し、価値を高めるために必要な費用も含まれます。
旧耐震マンションで、耐震診断や耐震補強工事をする場合にも修繕積立金が原資となります。

4.建物・敷地の売却にあたる調査費用

建物を建て替える際に必要となる調査費用は、修繕積立金から拠出することが可能です。
修繕積立金は、あくまで共用部分を修繕するための費用なので、専有部分の修理には適用されません。
そのため、専有部分に関しては別途支払いが必要ですが、共用部分と併せて維持や修繕していく方が良い場合、配管関係や火災感知器などは修繕積立金を使用できるケースもあります。

相場はいったいどのくらい?

修繕積立金

長期間にわたって支払う必要のある修繕積立金は、できる限り抑えたい方が多いでしょう。
しかし、修繕積立金に関する知識がなかったり、分譲事業者が提示した金額が低く設定されていたため、購入後トラブルになったりするケースもあります。
ここでは、実際の修繕積立金が適正な金額かどうか知るために修繕積立金の相場や相場の算出方法について紹介します。

修繕積立金の相場はどれくらい??

国土交通省「平成30年度マンション総合調査」の調査によると、1戸当たりの修繕積立金の総額の平均は月額 12,268 円(駐車場使用料等から修繕積立金への充当額を含む)となっています。
建物形態(建物の棟数)別では、単棟型が 11,875 円、団地型 14,094 円が平均値です。

平成11年度から平成25年度の修繕積立金の推移をみると、1戸当たりの修繕積立金の額は増加傾向となっていることが読み取れます。
国土交通省の調査によると、全国にあるマンションのうち、3棟に1棟、修繕積立金が不足しているデータが出ています。
今後も修繕積立金の平均値は上がると考慮して、マンション購入を検討すると良いでしょう。

修繕積立金平均値が高くなるケースと低くなるケース

修繕積立金の平均値は、マンションの規模や築年数によっても変わってきます。
高額な修繕積立金が設定されている場合は、以下のような理由が考えられます。

・プールやゲストルーム、ジムなどの共用設備が整ったマンション
・建物自体が古い物件
・地震や台風など自然災害が多い地域のマンション

それに対して、修繕積立金の平均値が低いケースでは以下のような理由が考えられます。

・設備が少ないマンション
・地方の小規模なマンション

マンションの戸数が多い物件は、共有部分が多く豪華な設備も多いので、一般的に積立金も高くなる傾向にあります。
また、20階以上の高層階へ住む場合も同様です。
高層階の修繕工事には、特殊な足場が必要になり、大規模な修繕がされます。
修繕積立金を抑えたいのであれば低層階の小規模なマンションから探していくと良いでしょう。

修繕積立金の適正額の目安は国土交通省のガイドラインを参照に

修繕積立金にまつわる情報不足やトラブルは多いです。
そのため、国土交通省から「修繕積立金に関するガイドライン」が公表されています。
ガイドラインには、修繕積立金に関する基本的な情報や修繕積立金額の目安が示されているので参考にすると良いでしょう。
修繕積立金に関するガイドラインでは、修繕積立金の目安を次の計算式で求めています。

【マンションの修繕積立金の額の目安(Y)=AX+B】

Yマンションの修繕積立金の額の目安
A専有床面積あたりの修繕積立金額(表)
X専有床面積(㎡)
B機械式駐車場がある場合の加算額

・Aの積立金額については、マンションのフロア数などで分類した上で目安がつきます。

【専有床面積あたりの修繕積立金額/月額】

 階数/建築延床面積平均値事例の3分の2が包含される幅※
15階未満5,000㎡未満218円/㎡165円~250円/㎡
5,000~10,000㎡202円/㎡140円~265円/㎡
10,000㎡以上178円/㎡135円~220円/㎡
20階以上 206円/㎡170円~245円/㎡
※事例の大部分が収まるような範囲という意味

事例の3分の2が包含される幅とは、事例の大部分が収まるような範囲という意味です。
・Bの加算額は、機械式駐車場の1台あたりの修繕工事費×台数×各住戸の負担割合です。
利用する駐車場が機械式駐車場の場合、修繕工事の費用は大きくなります。
そのため、下記表の数値を加算します。
一般的に、負担割合は専有部分の床面積割合としている場合が多いです。

【機械式駐車場の機種別修繕工事費(月額/1台)】

機械式駐車場の機種修繕工事費
2段(ビット1段)昇降式7,085円
3段(ビット2段)昇降式6,040円
3段(ビット1段)昇降横行式8,540円
4段(ビット2段)昇降横行式14,165円

上記の表をもとに、具体例を挙げて計算してみましょう。

・14階建/建築延床面積8,000㎡/専有面積100㎡の物件の場合

【マンションの修繕積立金の額の目安(Y)=AX】

A=202円、X=100㎡なので、修繕積立金の目安平均値は、202×100=20,200円です。
目安の幅は、140~240円なので、14,000~26,500円程度となります。
上記のマンションに、機械式駐車場を利用する場合も確認してみましょう。

・14階建/建築延床面積8,000㎡/専有面積100㎡の物件
・3段(ビット1段)昇降式の駐車場(30台)がある場合

B=6,040円×30(駐車場の台数)×100/8,000(床面積割合)=2,265円
上記マンションでの修繕積立金額の目安が14,000~26,500円だったので、Bを加算した修繕積立金額は、16,265~28,765円となります。

参照:国土交通省/「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要
(https://www.mlit.go.jp/common/000141884.pdf)

【築年数別】修繕積立金の相場について

修繕積立金の相場は、マンションの築年数によっても設定金額が変わってきます。
築年数によって、修繕積立金の相場がどれくらい変わってくるのかも確認しておきましょう。

完成年次平均修繕積立金(月額)
〜平成元年(1989年)12,154円
〜平成6年(1994年)12,760円
〜平成11年(1999年)13,447円
〜平成16年(2004年)12,649円
〜平成21年(2009年)12,386円
〜平成26年(2014年)9,846円
平成27年(2015年)以降6,928円
全体平均12,268円

参照:国土交通省/平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状/ 管理組合向け調査の結果
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html)

新築や築浅物件の方が、修繕積立金が低くなると考える方が多いかもしれません。
確かに、築年数が経つほど、建物が老朽化し、修繕費が多くかかるので高くなる傾向にあります。
しかし、実際は、築浅だからといって安いとは限りません。
不動産会社が新築物件を売りやすいように、販売当初は管理費や修繕積立費を安く設定し、数年後に値上げするケースもあるようです。
また、修繕積立金は、決まった金額が固定されていません。
一般的に新築当初は修繕積立金が低く設定され、5年くらいを目途に段階的に積立金額が上がっていくケースが多いでしょう。
マンションによっては、大規模な修繕工事が行われるまでの年数で修繕費用を割り、積み立てているケースもあります。
修繕工事の際にそれぞれの物件の大家さんから一時負担金を徴収して対応するマンションもあるでしょう。
積立方法は物件によっても異なりますが、基本的には修繕積立金の費用は上がっていくものだと考えておきましょう。

【戸数別】修繕積立金の相場について

マンションの総戸数の違いによって、共有部分の大きさも異なります。
そのため、修繕積立金の設定も違いが出てくるので確認しておきましょう。

総戸数規模平均額
~20戸1万4,722円
21~30戸1万1,416円
31~50戸1万2,028円
51~75戸9,850円
76~100戸1万872円
101~150戸1万58円
151~200戸1万526円
201~300戸1万467円
301~500戸1万3,566円
501戸~1万1,967円

総戸数から、多くのマンションの積立平均額は11,000円前後と読み取れます。
しかし、300戸を超える大規模なマンションでは平均額が13,000円を超え高い傾向にあるでしょう。
大規模なマンションでは、共用部分も多く、設備が充実しているので、その分月額に差が出ていると考えられます。

修繕積立金を経費計上するための条件

修繕積立金

修繕積立金を経費計上するためには、いくつかの条件があります。
どのような条件が必要なのでしょうか?

勘定科目は修繕費とすること

修繕積立金を経費計上する際には、勘定科目が修繕費になります。
物件管理のために使う費用なので管理費ではないかと考えるかもしれません。
管理費は、マンションなどの価値を保つために使う費用が該当するため、点検や清掃作業などが管理費になり、修繕費は該当しません。
修繕積立金は、マンションなどの大規模修繕工事などのために積み立てる資金であり、管理組合などが毎月一定の金額を所有者から集めます。

この資金は点検や清掃などで使うものではなく、設備の故障、破損、劣化などで使用するため、勘定科目は修繕費ということです。

所有者が修繕積立金を支払っていること

修繕積立金を経費計上するためには、区分の所有者が修繕積立金を支払っていることが条件です。
国土交通省のマンション標準管理規約第28条にあるように、区分の所有者となった場合は、管理組合に対して修繕積立金の支払い義務を負うことが記載されています。
これは、マンションを維持するために修繕積立金が必要だからです。
もし、修繕積立金を回収していない場合は、経費計上できないので注意しましょう。

修繕積立金は所有者へ返還する義務がないこと

マンションの修繕積立金は、管理組合から区分の所有者に対して返還義務がないことも重要な条件です。
これは、マンション標準管理規約の第60条にも「組合員が納めた修繕積立金や管理費などは返還請求できない」という内容があります。
このような規約に沿ったマンションの管理規約を作った場合は、区分の所有者から修繕積立金返還の請求を受けても応じる必要はありません。
これは、区分の所有者が退去や売却をした場合でも返金する必要はありません。
今まで積み立てた修繕積立金が戻るかどうか、管理規約などにこのような内容が記載されているかを再確認しておくと安心です。

積立金は限られた使い方しかしないこと

修繕積立金を経費計上するための条件には、積立金が限られた使い方しかできないことも確認しなければなりません。
これは、マンション標準管理規約の第28条にもあるように、修繕積立金は今後マンションの設備の故障、破損、劣化など修繕のために使用されること、他に流用されないことが条件です。
積立金の用途は、共用部分の定期的修繕、大規模修繕、災害や不測の事故など特別な理由で必要な修繕、建て替えやそれに関して必要な調査、敷地内や共用部分の増設、敷地売却、駐車場増設、バリアフリー化など区分の所有者の利益のためだけに限定されています。
もし、修繕積立金を通常の管理費としている場合、条件を満たせなくなるので注意してください。

積立金は合理的な計算方法で出されること

積立金に関しては、合理的な計算方法で出されることも条件です。
合理的な計算方法というのは、国税庁でそれぞれの区分所有者の共有持ち分に応じて算出される方法です。

共有持ち分は、マンション共有部分を区分の所有者が持っている所有権の割合を意味しています。
この計算式は、以下の式に当てはめて行います。

【式】

(A+B+C)÷X÷Y=Z

A:計画期間当初における修繕積立金の残高
B:計画期間全体で集める修繕積立金総額
C:計画期間全体における専用使用料などからの繰越金総額
X:マンションの総専有床面積(㎡)…戸当りの専有床面積(㎡)×戸数
Y:長期修繕計画の期間(ヶ月)…計画年数×12ヶ月
Z:全体の計画期間における修繕積立金平均額(円/㎡・月)

このように、合理的な計算方法で算出が必要になってきます。

修繕積立金の会計処理はどうなる?

修繕積立金

修繕積立金を経費計上するためには、いくつかの条件があることがわかりました。
そこで、ここでは会計処理した場合に加えて、区分の所有者がマンションを売却した場合の会計処理について解説します。

経費計上時には仕訳方法が2種類ある

修繕積立金を経費計上する際には、以下の方法があります。

修繕工事施工、完了した年に経費計上する

実際に修繕工事を施工して完了した年に経費計上する方法があります。
この場合、修繕積立金を工事でどれくらい使ったかを計算する必要があります。
工事費に10万円使ったと仮定した場合の計算方法です。
修繕積立金を支払った時は、このように処理します。

借方勘定科目借方金額賃方勘定科目貸方金額摘要
修繕積立金10,000円普通預金10,000円修繕積立金


※修繕積立金は長期前払費用、前払費用などの資産科目でも可能です

実際に施工した際には経費を振り替えます。

借方勘定科目借方金額賃方勘定科目貸方金額摘要
修繕費100,000円修繕積立金100,000円修繕工事

修繕積立金から実際の工事にした使用した金額を明確にするのが難しい場合は、条件を全て満たして修繕積立金を支払った年に経費計上するのが良いでしょう。

条件を全て満たして修繕積立金を支払った年に経費計上する

条件を全て満たしていて、修繕積立金を支払った年に経費計上する場合は支払ったタイミングで経費として計上します。
処理方法は、以下のとおりです。

借方勘定科目借方金額賃方勘定科目貸方金額摘要
修繕費10,000円普通預金10,000円修繕積立金

この場合は、支払った時点で経費計上しているため、修繕工事施工や完了に伴った処理は必要ありません。

売却時の修繕積立金について

区分の所有者にとっては、マンションを売却した際に今までの修繕積立金がどうなるのか気になる方もいることでしょう。
また、入居している間に一度も修繕がされなかった場合は、積立金の返済を求めてくるかもしれません。
しかし、オーナー側がマンションの修繕積立金を返金する必要はありません。
これは、納めた修繕積立金がマンション管理組合の財産として考えられるからです。

管理組合は、修繕積立金の残高によって価格が決まる部分もあります。
ただし、マンションの建て替えなどで管理組合が解散となった場合は、それぞれ区分の所有者が負担してきた割合に応じて修繕積立金を精算して返金するケースもあります。
その時の条件に適した会計処理が必要になってくるでしょう。

修繕積立金の相場は?

修繕積立金

ここまで修繕積立金について説明してきましたが、知っておきたいのが修繕積立金の相場についてです。
修繕積立金は、マンションの修繕積立金に関するガイドラインを基に決めているため、相場以上の金額にするのは難しいでしょう。
ここでは、修繕積立金の相場について解説します。

修繕積立金額の目安

修繕積立金額の目安は、それぞれのマンションの大きさ、立地、環境などの条件によって変動します。
そのため、目安の算出は実際に作成された長期修繕計画を収集して、事例に合わせた平均値を国土交通省が示しています。
ただし、修繕積立金額はマンションの状態や要因で変動するため、あくまで目安です。
計算式は、上記でも解説したように「(A+B+C)÷X÷Y=Z」を使います。
以下の内容を参考にしてみてください。

【計画期間全体での修繕積立金の平均額(目安)】

地上階数/建築延床面積 (20階未満)月額専有面積当たりの修繕積立金額
平均値
5,000㎡未満335円/㎡・月
5,000㎡以上10,000㎡未満252円/㎡・月
10,000㎡以上20,000㎡未満271円/㎡・月
20,000㎡以上255円/㎡・月
地上階数/建築延床面積 (20階以上)338円/㎡・月

機械式駐車場がある場合

マンションなどに機械式駐車場がある場合は、さらに加算する必要があります。
加算については、以下の計算式を使います。

【式】
機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費×台数÷マンションの総専有床面積(㎡)

機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費に関しては、以下の表を参考に数字を入力します。

機械式駐車場に設置されている機種修繕積立費(月額・1台あたり)
(ビット1段)2段昇降式6,450円/月・台
(ビット2段)3段昇降式5,840円/月・台
(ビット1段)3段昇降式7,210円/月・台
(ビット2段)4段昇降式6,235円/月・台
(垂直循環方式)エレベーター方式4,645円/月・台
その他5,235円/月・台

もし、駐車場の維持や管理、修繕工費用や駐車場使用料などについて、管理費、修繕積立金として経理している場合、機械式駐車場においての修繕工事費を駐車場使用料収入でまかなう場合、機械式駐車場がある場合の加算額を加える必要はありません。

首都圏の中古マンションの修繕積立金について

東日本レインズが2018年度に公表した「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金」に関しての調査結果を確認した結果、平均10,392円という金額になっています。

ワンルームマンションの修繕積立金について

1つの居室、トイレ、ユニットバス、キッチンがあるワンルームマンションは、単身者向けなので、学生、転勤などの理由で住んでいる方が多いです。
そんなワンルームマンションは、月額1,400円~3,660円が平均値になっています。

大規模マンションの修繕積立金について

100戸以上でタワーマンション以外の大規模マンションの修繕積立金の相場は、月額2,500円~12,690円が平均値になっています。

小規模マンションの修繕積立金について

100戸以下でワンフロアの住戸数が少ない小規模マンションの修繕積立金は、月額1,820円~28,620円が平均値になっています。

タワーマンションの修繕積立金について

100戸以上、総階数20階以上のタワーマンションの修繕積立金は、月額2,330円~27,900円が平均値になっています。

修繕積立金が値上げされるのは本当?

修繕積立金

修繕積立金は、マンションなどの維持に欠かせないものとなっていますが、値上げをしなければならないケースがあります。
最初から計画的に積み立てることもできたはずなのに、なぜ値上げが必要なのかをみていきましょう。

段階増額積立が主流になっているから

段階増額積立とは、最初の方は積立金を低く設定しておき、段階的に上げていくことです。
設定額を一律に徴収していく均等積立もありますが、多くのマンションで段階増額積立を採用することが多いため、次第に値段が上がっていくということです。
1980年代では、均等積立を採用しているマンションが約53%と半数以上あったのですが、2010年以降は段階増額積立を採用するマンションが約68%を占めるようになってきました。
マンションも年数の経過によって劣化していく部分も多くなりますが、修繕積立金の徴収額が増えたことで家計の負担も大きくなってしまう問題もあります。

国土交通省が2021年に調査した際には、マンション修繕積立金の徴収額が1戸あたり月額平均21.420円でした。
これは10年前と比較した結果、7,000円以上の上昇が確認され、平均3.6倍あったという計算になりました。
あまりに急激な値上げは、積立金の滞納に繋がる可能性もあるので気を付けなければなりません。

修繕費用そのものの相場が上がっているから

現在、日本ではほとんどの商品が値上がりしている状態です。
修繕費は、修繕した時にどれくらいのお金がかかったかによって金額が変わってきます。
社会情勢にも大きく左右され、さらなる物価の大幅高騰の可能性も否定できません。

そのため、修繕費用は行ったタイミングで大きく費用が変わってしまうことから、大幅な値上げになってしまうのです。

計画にない修繕が追加されるから

修繕費を積み立て始めた当初に予定していない工事が追加された場合、修繕積立金では足りなくなってしまう可能性があります。
このような計画にない修繕は、値上がりで補う以外に手段がないため、修繕費の値上げになるということです。

管理会社に任せているから

管理会社にマンションの修繕などを任せている場合、大規模修繕の費用も高額になりやすいでしょう。
修繕費が高額になれば、入居者への負担も大きくなってしまうのです。
マンション管理を管理会社に任せないのは、業務が多くなってしまい大変です。
しかし、修繕費の増額で入居者が減ってしまっては意味がありません。
このような場合、管理会社に任せるのではなく、理事代行の依頼や簡易アドバイザー契約などでプロの意見を参考にしながら修繕計画を立てるのがおすすめです。

大規模修繕に適した工事内容、費用であるか、無駄な内容や費用が含まれていないかを見極めてもらい、修繕積立金の値上げを抑えることができます。

ここまで、マンションの修繕積立金がどのような仕組みなのか、修繕積立金の使い道や計算方法、値上げの可能性などについてご紹介してきました。
マンションの修繕積立金は、基本的に大規模修繕工事などで使われます。
しかし、修繕時期によって費用が大幅にアップしてしまう可能性があり、この金額が負担になる入居者もいます。
修繕積立金を計画的に計算しておくことが大切です。