エレベーターに閉じ込められた!対処法&やってはいけない行為について解説

エレベーター

移動手段として便利なエレベーターですが、乗っている最中に地震などが起きることで閉じ込められてしまうケースもあります。
万が一エレベーターに閉じ込められてしまっても、冷静に対処することが大切です。
そこで今回は、エレベーターに閉じ込められてしまった時の対処法ややってはいけない行為、日頃の訓練などについてご紹介します。
地震が発生するとエレベーターがどのような動きをするのかも解説しているので、防災にぜひ役立ててください。

目次

地震の影響でエレベーターが停止する割合はどれくらい?

エレベーター

地震が発生すると停止してしまうエレベーターもありますが、中には問題なく動作しているものもみられます。
地震の影響によって停止してしまうエレベーターの割合はどれくらいになるのでしょうか?
国土交通省の調査によると、2018年6月18日に大阪北部を震源に発生した最大震度6弱の地震では、運転を休止したエレベーターの割合は約63,000台にも上りました。
特に震源となった大阪は約37,000台が運転を休止し、その割合は55.8%にもなります。
運転を休止した約63,000台(32.1%)のうち、閉じ込めの被害に遭ったのは346台で、割合的に見ると0.5%とわずかな数字でした。
また、閉じ込めの被害は発生したものの、エレベーターによる人身事故は発生していません。

エレベーターに備わっている「地震時管制運転装置」とは

運転休止の台数に比べて閉じ込めの被害が少なかったのは、エレベーターに備え付けられている地震時管制運転装置が一定の効果を出したものと推測されます。
地震時管制運転装置とは、地震などの加速度を検知して自動的に昇降路の出入口の位置に停止させ、扉を開けられるようにする安全装置を指します。
この装置は法律でも設置が義務付けられており、エレベーターでの閉じ込め事故の被害を最小限に抑えているのです。

閉じ込め事故の対応について

大阪で発生した地震の事例では、閉じ込め事故の救出において約87%は3時間以内に救出されました。
一方、残りの13%は3時間以上が経過してから救出されています。

3時間以上かかった原因としては、閉じ込めを救出するためにエレベーターの保守事業者が現場に保守員を送りますが、地震直後ということもあって公共交通機関の停止や交通渋滞などの影響で現場への到着が遅れてしまったことが挙げられます。
また、一般電話回線が混雑してつながりにくい状況になったため、保守員まで情報伝達が遅れてしまったことも原因となっていました。
また、通常はエレベーターの保守事業者が対応しますが、消防機関で閉じ込めの救出に対応した事例もあります。
消防本部において97件閉じ込めに対して出動し、そのうち51件を消防隊員が救出しました。
それ以外の46件については保守員が到着するのを待ったり、消防隊員が現場へ到着する前に解決したりしています。

地震が発生した時、エレベーターはどのような動きをする?

エレベーター

地震が発生した際に、エレベーターの運転装置は地震時管制運転装置によって通常と異なる動きをすることをご紹介しましたが、具体的にどのような動きをするのか、事前に知っておくと万が一の事態が発生した際にも冷静に対処できます。
続いては、地震発生時のエレベーターの動きについてご紹介しましょう。

まず、地震にはP波とS波があります。
最初に秒速約7km/sという速いスピードでP波が伝わり、次に秒速約4km/sとスピードは遅いものの揺れが大きいS波が伝わってきます。
緊急地震速報はP波を検知することで、次に来るS波が伝わる前に通知する仕組みです。
エレベーターの場合も、P波感知器が作動するとまずは最寄りの階へと向かうよう動きます。

次にS波感知器が作動するのですが、地震の揺れの強さが低かった(低ガル)場合と高かった(高ガル)場合ではエレベーターの動作が異なります。
低ガルのS波を感知した場合、最寄り階に到着したら扉を開けてその後運転休止をします。

エレベーターは動かなくなってしまうものの、最寄り階に到着して扉は開放されるため、閉じ込めは起こりません。
しかし、高ガルを感知した場合、エレベーターに損傷がなかったとしてもその場で運転を休止してしまいます。

つまり、エレベーターの閉じ込め事故は高ガルを感知した場合に発生するのです。

エレベーターに閉じ込められた時の対処法

エレベーター

地震や停電はいつ発生するかわからないものです。
そのため、突然エレベーターが停止してしまい、閉じ込められてしまう可能性は誰にでもあります。
こういった状況下にあるとパニックを起こしてしまう人もいますが、焦らずに対処することが大切です。
ここでは、万が一閉じ込められてしまった時の対処法についてご紹介します。

階数が書かれたボタンをすべて押す

地震が発生して突然エレベーターが急停止したり、異常を感じたりした場合はまず階数が書かれたボタンをすべて押します。
比較的新しいエレベーターであれば地震時管制運転装置が作動して最寄りの階に自動停止するよう作られています。
しかし、古いタイプのエレベーターや海外製だった場合は途中で停止してしまう恐れがあり、救出に時間がかかってしまう可能性も高いです。
そのため、まずはすべてのボタンを押して動きそうなら停止した階で降りるようにしましょう。
エレベーターが停止していなかったとしても、目的の階まで行こうとしてその途中で緊急停止してしまい、閉じ込められてしまう可能性もあります。
再度閉じ込められないよう、避難する際は非常階段を使うようにしてください。

非常用インターホンを使って連絡を取る

階数が書かれたボタンをすべて押しても反応がなかった場合、エレベーター内に設置されている非常用インターホンを使って外部に連絡を取りましょう。
非常用インターホンは係員が出るまでボタンを押し、応答があれば冷静に現状を伝えるようにしてください。

万が一非常用インターホンが壊れている場合や、回線の影響で係員がなかなか出なかった場合、自分のスマホから119または緊急連絡先に連絡してみましょう。
スマホから連絡する場合は、操作盤近くに緊急時の連絡先番号や管理会社、ビル名などが記載されていることもあるため、その情報を確認しつつ連絡を取ってみてください。

非常用グッズを使う

エレベーターによっては非常用のアイテムが設置されている場合もあります。
例えばエレベーターの四隅に防災備蓄ボックスが設置されている場合、その中に非常用飲料水や非常用食料、ライト、ブランケットなどが入っています。

簡易トイレなども入っている場合があるので、確認してみましょう。
また、エレベーター内にAEDが設置されている場合もあります。

楽な姿勢を取る

上記でもご紹介したように、閉じ込め事例のうち8割以上は3時間以内に救出されていますが、場合によってはそれ以上かかってしまうこともあります。
救助を待っている間、立ち続けていると大変なので、体力を温存するためにも楽な姿勢を取るようにしてください。

また、エレベーター内はある程度通気性が保たれているため窒息する危険性は少ないものの、例えばたくさん人が乗っていたり夏場は換気が追い付かなかったりするケースもあるでしょう。
特に温度が高い・低い場面では体力の消耗も激しくなってしまいます。
非常用グッズの活用や服を脱いで対策するなど、調整する事が大切です。

子どもは自分で体温を調整するのが難しく、大人以上に消耗している可能性も高いことから、こまめに体調などを確認するようにしてください。

エレベーター内に設置されていると便利な非常用アイテム

エレベーター

エレベーター内に非常用アイテムが置かれている場合もあります。
閉じ込められてしまった場合でもこういったアイテムがあることで、安心感や快適性なども異なってくるでしょう。
ここで、エレベーター内に設置されていると便利な非常用アイテムについてご紹介します。

非常用飲料水・食料

水分や食料は人間が生きるために必要なものです。
特に夏場閉じ込められてしまった場合、気温の高さによって水分がどんどん失われてしまい、脱水症状を引き起こす恐れもあります。
食料に関しては、糖分・塩分が補給できるものがあると安心です。

飴などがあると便利でしょう。

簡易トイレ

閉じ込められている中で突然もよおしてしまうこともあるでしょう。
そんな時でも簡易トイレがあると安心です。
中には、防災グッズを収納できるキャビネットが、非常用トイレとして使えるようになっている場合もあります。

懐中電灯

停電などが発生するとエレベーターが停止するだけでなく、照明が消えてしまうこともあります。
暗い中にいると不安も大きくなり、冷静さを欠いてしまう恐れもあるでしょう。
懐中電灯で光を灯すだけでも安心感が違ってきます。

防寒シート・ブランケット

寒い時期に閉じ込められてしまった場合、寒さによって体力がどんどん消耗してしまう場合もあります。
体力を温存するためにも寒さを防ぐことが大切です。
非常用アイテムとして防寒シートやブランケットなどがあると、寒さも防ぐことができます。
また、防寒シートやブランケットは簡易トイレを使用する際に、目隠し代わりとして活用することも可能です。

携帯ラジオ

災害が発生した際、多くの人はスマホを使って情報収集しようと考えますが、アクセスが集中していることでつながりにくい場合も少なくありません。
そんな時に携帯ラジオがエレベーターに備わっていると、そこから情報を収集できるようになります。

また、誰かの声を聞くことで「つながっている」という安心感も生まれやすいです。

消臭スプレー

消臭スプレーは簡易トイレを使用した後はもちろん、夏場に人が多く乗っている環境で少しでも快適性を向上させてくれるアイテムです。
絶対に必要というわけではないものの、あると便利な非常用アイテムと言えます。

エレベーターに閉じ込められた時にやってはいけない行為

エレベーター

エレベーターで閉じ込められた時は上記でご紹介した方法を取ることが大切ですが、それとは逆にやってはいけない行為も存在します。
どういった行為はやらない方が良いのか解説していきましょう。

無理やりドアをこじ開けようとする

万が一エレベーターに閉じ込められてしまった時、早く脱出しようとしてドアを無理やりこじ開けようとする人もいます。
運転が停止したエレベーターに閉じ込められた状態になると、このまま落下してしまうのではないか?と考えて不安になってしまうため、このような行動を取ってしまうのも無理はありません。
しかし、無理やりドアを開けられたとしても、その隙間から誤って落下してしまったり、突然エレベーターが動き出してドアに挟まれてしまったりする可能性もあります。

重大な事故につながるケースもあるため、早く脱出したくても無理やりドアをこじ開けないようにしましょう。

天井からの脱出を試みる

アクション系のドラマや映画などでは、エレベーターの天井パネルが外れてそのまま外に脱出する場面が見られることもあります。
そういった場面を思い出し、天井からの脱出を試みようとする人もいるでしょう。
しかし、エレベーターの天井はパネルが外れるようになっていたとしても頑丈に施錠されており、脱出することは困難です。

そもそも日本国内で製造されたエレベーターは天井に点検口が備わっていないことも少なくありません。
また、万が一天井パネルが外れて脱出できても、安全に避難できる可能性は低いです。
例えば階と階の間にエレベーターが停止している場合、別の階へ移動するのも難しい状態となっています。
天井にいる状態で突然エレベーターが動き出し、自身がバランスを崩して転落する恐れもあるため、天井から脱出しないようにしてください。

エレベーターに閉じ込められた時に役立つ情報収集のやり方

エレベーター

万が一エレベーターに閉じ込められてしまった時、外の状態がどうなっているのか気になる方も多いでしょう。
周辺状況を確認するためにも情報収集が必要です。
救出が来るまでの間、災害の情報を得るためにも情報収集のやり方についてもご紹介します。

動画配信サイトでニュースを確認する

リアルタイムで災害情報を収集したい場合は、動画配信サイトを活用するのがおすすめです。
YouTubeなどの動画配信サイトでは、各ニュースサイトがそれぞれリアルタイムでライブ配信を行っています。
特に「BSC24(自然災害情報共有放送局)」は、YouTube・ニコニコ生放送・Ustreamなどからチェックでき、自然災害に関する情報に特化して発信しています。

誰でも無料で利用できるので、災害時に役立てましょう。

携帯ラジオで確認する

エレベーターの非常用アイテムの中に携帯ラジオが入っていたら、ここからも情報収集ができます。
スマホでもradikoなどのアプリを使えばラジオを聞くことは可能ですが、充電が切れてしまう恐れがあります。
携帯ラジオなら電池式やクランク式で発電するものもあるため、スマホの充電を使わずに情報収集が行える便利なアイテムです。

また、携帯ラジオの中には防災に役立つ機能として、緊急放送を受信できる機能やノイズキャンセル機能が搭載されているものもあります。
これらの機能があると、受信した音声を綺麗に聞くことができ、しっかりと防災情報を収集することも可能です。

SNSを利用する

素早く災害情報を収集したい場合には、SNSの利用がおすすめです。
特にX(旧Twitter)は地震の被害状況や避難に役立つ情報などを拡散し、提供している場合があります。

日頃から災害時に役立つアカウントをフォローしておくと、情報も見つけやすくなるのでおすすめです。
ただし、SNSを利用する際にはデマ情報に注意が必要です。
これまで日本で大規模な自然災害が発生した際、必ずと言って良いほどデマ情報がSNSで拡散されてしまいました。
近年は画像・動画の編集技術も高度化しており、あたかも本当に起きたことのように見せることもできます。
こういったデマ情報には踊らされず、本当に必要な情報だけを収集できるようにすることが大切です。

防災アプリを利用する

SNSなどで正確な情報の見極めが不安という方には、事前に防災アプリをダウンロードしておくことをおすすめします。
防災アプリを使えば、誰でも素早く正確な情報を収集できるようになります。
特におすすめの防災アプリは以下のとおりです。

・防災情報 全国避難所ガイド
防災情報 全国避難所ガイドは、現在地周辺の避難所や避難場所を自動で検索でき、ハザードマップの表示や現在地の防災情報を通知してくれるアプリです。
自治体が定めている避難所・避難場所を15万件以上収録しており、日々更新されています。
また、安否確認機能なども搭載されており、災害時に家族の安否確認を行うことも可能です。

・Yahoo!防災速報
Yahoo!防災速報は、避難情報や地震情報、国民保護情報(Jアラート)など、あらゆる情報に対応している防災アプリです。
防災手帳には災害時に役立つ情報なども記載されており、日頃からチェックしておくことで防災意識を高めることもできます。

・NHKニュース 防災
NHKニュース 防災では、最新のNHKニュースや動画コンテンツ、さらに防災に関する様々な情報を配信しているアプリです。
お天気カメラを使ったライブ配信にも対応しています。

・東京都防災アプリ
東京防災アプリは、防災に関する基礎知識を楽しみながら学べるアプリです。
東京都内の情報が多いですが、災害に役立つコンテンツを自らカスタマイズして利用できるため、都民以外の人にも役立ちます。

・MySOS
MySOSは、医療に関する基本的な知識が掲載されたアプリです。
自分自身や家族の健康情報を事前に記録しておくことで、緊急時にもスムーズに対応できます。
エレベーターでの閉じ込めだけでなく、日常生活の中でも活用できる情報を収集できます。

・特務機関NERV防災
特務機関NERV防災は、X(旧Twitter)でも有名なアカウントで、気象庁など確かな情報源から発信されている情報を広く拡散してくれています。
そんな特務機関NERV防災はアプリでも利用可能です。
アプリの場合、災害時に必要な情報のみを表示したり、情報を読みやすいようレイアウトを変更できたりします。

・ココダヨ
ココダヨは、事前に登録した人の位置情報を受信できるアプリです。
例えば家族で登録しておくと、災害警報に連動して登録した人の位置情報が受信できるようになっています。
家族の居場所の確認や、安否確認を行いたい時に役立ちます。

・キキクル
キキクルは気象庁が提供しているアプリで、土砂災害や浸水、洪水などの危険度をチェックできます。
地震と同時に、洪水や土砂災害などの危険性が周囲にあるか確認したい場合に役立つアプリです。
また、1~3時間後の危険度も予測しやすくなっています。

・Maps.Me
Maps.Meは、オフライン環境でもアクセスできる地図アプリです。
地図アプリとして多くの方が利用するGoogleマップは、インターネットにつながっていないと利用できないというデメリットがあります。
しかし、Maps.Meであればネットがつながっていなくても利用できるため、現在地や避難場所などを確認したい場合におすすめです。

エレベーター閉じ込めに関する様々な疑問を解決!

エレベーター

エレベーターの閉じ込めに関する疑問は解消しておきましょう。
ここでは、よくある疑問と回答をご紹介します。

エレベーターが停止すると落下する可能性は高い?

エレベーターが運転を停止してしまうと、「落下するのでは?」と不安に感じる方も多いでしょう。
エレベーターは複数の安全装置が設けられており、万が一運転が停止した場合でも落下しないように設計されています。
ただし、絶対に落下しないとは言い切れません。
万が一落下してしまった場合には、まずエレベーターの中央に仰向けになり、地面にぶつかった時の衝撃を全身に分散させることで即死を防げる可能性があります。

地面にぶつかった瞬間にジャンプをすれば良いと考える人もいますが、ジャンプをするためにはタイミングを完璧に合わせなくてはいけません。
また、エレベーターの落下速度はかなりのスピードになるため、このスピードを超えるほどのジャンプをしないと衝撃が体に伝わってしまいます。
こういった理由から、万が一落下した場合は仰向けに寝転がった方が良いでしょう。

酸欠になることはある?

エレベーターの中に閉じ込められると酸欠になってしまうのではないかと不安に感じる人もいるでしょう。
実際にはエレベーターも完全に密閉されているわけではなく、空気が流れています。
そのため、酸欠にはなりません。

ただし、乗員が多いといくら空気が流れていても息苦しさを感じてしまうこともあるので注意してください。

救助にかかる時間はどれくらい?

救助にかかる時間は、その時の状況や救助隊の到着スピードによって様々です。
非常用インターホンがつながれば対応も早く、数分~数十分程度で救助されるでしょう。

ただし、大規模な地震が発生するとすぐに救助へ向かうことができず、時間がかかってしまう恐れがあります。
上記でもご紹介した大阪北部で発生した地震では、救助に最大5時間以上かかった事例もありました。

復旧までにどれくらい時間がかかる?

マンションにエレベーターが設置されていた場合、停止してからどれくらいで復旧するのか気になる方もいます。
エレベーターは一旦停止してしまうと、技術者が現場を見て安全だと確認が取れなければ運転を再開することができません。

そのため、大規模な地震が発生すると復旧までは時間がかかってしまいます。

マンションのエレベーター閉じ込めに備えて訓練を実施しよう

エレベーター

マンションを運営するオーナーにとって、自身が所有するマンションでエレベーターの閉じ込めが起きてしまった場合、どうすれば良いか困ってしまう人も多いでしょう。
万が一の事態が発生しても冷静に対処するためには、事前の備えが必要です。
そこで、マンションのエレベーター閉じ込めに備えて、救助訓練を実施することも検討してみてください。

救助訓練の主な内容

救助訓練を行うためには、エレベーターの管理会社に依頼する必要があります。
管理組合とも相談し、エレベーターの保守点検を担う管理会社に救助訓練を行いたい旨を伝えてみましょう。
救助訓練ではエレベーターに閉じ込められた場合を想定して、その時にどうすれば良いのかを実際に行っていきます。
例えば、住民が建物側からエレベーターのドアを開けられる方法や、エレベーターがどのような動きを見せるのかなど、住民同士でも助け合えるように訓練に取り組みます。
また、救助訓練を行うことによって現状における問題点なども見えてきます。
ただし、この訓練を行ったからと言って必ずしも救助を行って良いわけではありません。
救助を行う条件として以下の3つが挙げられます。

・エレベーターの管理会社と連絡が取れない
・保守員がいつ来られるかわからない
・閉じ込められた人に命の危険性がある

救助訓練の事例

実際にマンションでエレベーターの救助訓練を行った事例をご紹介しましょう。
あるマンションではエレベーターに閉じ込められてしまったケースを想定し、住民たちの自助によって救出するための訓練が行われました。
この訓練を受けたことで、万が一災害時にエレベーターが壊れてしまった場合、自動着床装置など安全にかかわる機能が作動しない可能性もあることを住民は知ります。
こうしたリスクを理解することも、訓練のためには必要です。
実際に訓練を受けた人には救出訓練マニュアルが配布され、緊急時はマニュアルに沿った対応を取るように伝えられました。

エレベーターは日頃の定期検査も重要!

エレベーター

エレベーターは適切に管理されていなかった場合、重大な事故につながってしまう恐れもあります。
そのため、マンション内のエレベーターは定期的に点検することが重要です。

定期検査と保守点検について

エレベーターの点検は大きく2種類に分けられます。
定期検査は年に1回行われ、建築基準法で義務付けられている検査になります。

ロープが摩耗していないか、錆びや異音などはないか、装置の作動状況に問題はないか、などをチェックしていきます。
この定期検査に加え、1~3ヶ月に1回のペースで保守点検を実施していきます。
ただし、保守点検は法律で義務付けられているものではないため、行わなくても法律違反とはなりません。
それでも保守点検は安全性を守るために重要な検査となるため、万が一怠って事故が発生した場合に、オーナーの管理責任が問われる場合もあります。

保守点検の内容

義務ではないものの、安全性を維持するために保守点検も重要です。
保守点検では主に以下の項目を点検していきます。

・バッテリー
・ブレーキ
・巻き上げ機やロープ
・バッテリー
・かご、乗り場
・制御盤 など

エレベーター保守点検の契約について

エレベーターの保守点検を行うなら、管理会社と契約するのがおすすめです。
保守点検における契約形態には「フルメンテナンス契約」と「POG契約」の2種類があります。

フルメンテナンス契約は部品交換や修理費用が毎回含まれている契約で、万が一部品交換や修理が点検時に行われても追加で費用が発生することはありません。
一方、POG契約は修理や交換が必要になった際に、別途費用が発生する契約形態です。
フルメンテナンス契約の方が月額費用は高いことから、毎月の費用を抑えたい人にはPOG契約を選んだ方が良いでしょう。
ただし、修理や交換の回数が多い場合、最終的な支払い総額はフルメンテナンス契約の方が割安になる可能性もあります。

更新時期についても検討する

日頃から定期点検を行っていても、使っているうちに経年劣化してしまいます。
そのため、マンションのオーナーは更新時期についても検討する必要があります。
国税庁が定めた減価償却基準では、エレベーターの耐用年数は17年となっています。
ただし、メーカーは20~25年と耐用年数を設定している場合が多いです。
また、国土交通省が定める長期修繕計画に関するガイドラインの中では、30年で更新をするように推奨しています。
このように、更新時期の目安はそれぞれで異なるものの、多くの場合は30年を目安に考えることが多いようです。
それでも30年はあくまで目安となるため、エレベーターの状況を確認しつつ更新の時期を逃さないようにしましょう。

今回は、エレベーターに閉じ込められてしまった時の対処法ややってはいけない行為などをご紹介してきました。
エレベーターに乗っている最中、突然停止してしまう可能性はゼロではありません。
比較的新しいエレベーターであれば地震時管制運転装置が作動して最寄りの階で降りられる可能性もありますが、かなり大きい揺れを感知するとその場で緊急停止し、外部からの救助を待たなくてはいけなくなってしまいます。
この時、パニックにならず冷静に対処することが大切です。
マンションのオーナーであれば、万が一閉じ込めが起きてしまった際にも住民が安全に過ごせるよう、非常用グッズを用意しておくなど対策しておくことも重要になります。
また、定期的に訓練を実施し、住民の防災意識を高めていくことも検討してみましょう。